90minutes -TH-

荒廃-YOU- ページ29

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事務所の小さいテーブル



ｶｲ｢ん･･･｣



そこに紅茶を淹れたティーカップを置くカイ




ｶｲ｢お前･･･今日‥
　ちゃんと客取れんの？｣


『なにそれ･･･取るに決まってるじゃん』



なんのためにいたくも無い場所に
こんな格好でいるっていうのよ



ｶｲ｢･･･それならいいんだけど｣



伏し目はカップの中の紅色の液体だけに向き
さっきから目を合わそうとしない



まるで後ろめたい事でもあるかのよう




『まぁ‥金曜だから
　ちょっと気は乗らないけどね』



よせばいいのに口から出てしまう本音



ｶｲ｢･･･そっか｣


『彼････来ないね』


ｶｲ｢･････｣



黙ったまま紅茶を啜る伏し目



『ねぇ･･･』


ｶｲ｢なに？｣



不安に思う事が１つ



『あの金曜の彼･･･
　彼から店に来たりとか電話とかない？』


ｶｲ｢････来てない
　あれから一切なんもない｣


『そっか･･･
　それならまだよかった』


ｶｲ｢え？･･･よかった？｣



テヒョンが会いにも来ず
連絡もくれない事に当然落胆はする


だけど
会いに来ないことよりも怖い事がある



『私以外の女を指名してないならいい』


ｶｲ｢･････｣


『少なくともここでそれはなさそうだし』



テヒョンが他の女を抱く事他の女を想う事
他の女と一緒にいると考えただけで胸が苦しい




『可笑しいよね
　私に客を縛る権利なんて無いのに』



こんな女･･･テヒョンは
もしかしたら飽きたのかもしれない



面倒になったのかもしれないし
気持ちは消え失せたのかもしれない



テヒョンが私を待たなくなったところで
責める権利なんて持ち合わせてない



私と彼は恋人でもなんでもない
ただの･･･“アンナ”と“客”


裏切りでも何でもない関係




また元のようにひたすら
いつか終わるその日に向かうだけ



それでも



『ごめん･･･カイ
　やっぱり今日は早退させて欲しい』



テヒョンがいない事で
こんなにも心が荒んでしまうなんて




泥沼に差し込む光を見失ったら
後はもう･･･底のない沼底に堕ちるだけ




苦しくて息が出来ない




◎作者よりお知らせ


この度、お友達の作者さんとの
コラボ短編を公開する事になりました〜！

ありがたい事に私も
参加させてもらってますので
こちらもどうぞよろしくお願いいたします〜


「びっくり箱 -コラボ短編集-」

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