10人目の居場所は、ここに。ー４ー (ページ17)

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Iwamoto side

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岩本「あと何回か通すけど、ここからはうた見学ね」

『……え、っ、そんな、』

深澤「まぁ妥当だろうな」

『…や、だ』

ラウ「じゃあ僕もうたくんと一緒に見学しよーっと」

阿部「それは絶対ダメでしょ」

動画撮ってて、とカメラを渡した時に触れたうたの手は結構熱を持っていて、見学し始めてからもしばらく上がった息が整わない様子だった。

何回かやって休憩になると、うたは静かにレッスン室を後にした。

向井「あれ、うたくんどこ行ったん？」

宮舘「そういえばいないね」

向井「うたくんに振り見てもらおーって思うたのになんで！！」

岩本「さっき外出てったけど、まだ帰ってきてないね」

阿部「あれ、そうなんだ」

岩本「ちょっと見てくるわ」

"じゃあ照兄教えて！！" と言ってきた康二を一旦ふっかに預けて、ひんやりとした廊下に出る。

当日は天気良いといいなーって言ってたうたはグループで一番低気圧に弱い片頭痛持ち。

今日だって空はどんよりとした雲に覆われていて、翔太は心なしか機嫌が悪かった。

ぶらぶらと歩いても特に自販機とか別の部屋とかにうたの様子はない。

だとすれば、トイレとか？

昨日は額に子供サイズの冷えピタを貼って仕事現場に来たし、その前は雑誌の撮影中に倒れたし、舘さんに減量中の食事は管理してもらってるらしいけど、それでも十分しんどそうだった。

「うたーー！いる？おーい！あ、すいません、」

近くのトイレに入って叫んだ瞬間に馴染みのスタッフさんが出て来てちょっと恥ずかしい思いをしただけで、うたの姿は見当たらない。

じゃあ、と違う階のトイレまで足を伸ばせば奥の個室から苦しそうなくぐもった声が聞こえて来た。

「うたー？いるよねー？大丈夫？一旦鍵開けれる？」

思い出すのはずっと昔のこと。

未成年なのに事務所の先輩に酒の席に連れて行かれてトイレで倒れていたうたの姿を今でも鮮明に覚えている。

あの時のような焦りが体を駆け巡った。

ガタガタと扉が揺れる音はするけれど、一向に鍵が開かない。

うたの返事もないし、何もできないもどかしい状況が数十秒続いた。

「うたっ！！あっついな、しっかりしろって」

ようやく鍵が開いて倒れてきたうたは真っ青な顔でぐったりとしていた。

急いでポケットからスマホを取り出して適当に履歴の一番上の人に電話をかける。

やがて誰かの足音が聞こえて来て、ようやく安心できた。