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Abe side
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7月に入り、夏が急くようにやってきた頃。
うたはアメリカへ出発した。
1人でアメリカへ行くことについては、言葉の面でも生活の面でも特に問題はないだろう。
むしろ不安なのは心の方で、それは無事を願う他に出来ることは何も無かった。
2週間でYouTubeに投稿するためのMVを撮り、アルバムの全曲のレコーディングを行うらしい。
弾丸スケジュールだよね、そう言って笑う彼の顔は晴れ晴れしていた。
誰もが、何事も起こらず彼が帰って来ることを願っていた。
定期的に来る連絡と電話は、安心材料だったし。
むしろ、事が起こったのはこっちだった。
ジャニーさんが亡くなった。
絶望に浸る俺らの頼みの綱はデビューだけ、塗り重ねる練習と経験だけ。
分かっていたけれど、間に合わないのは当たり前だけど、もう長くないと言われた段階でうたに電話を掛けた。
この選択肢すら、間違っていたのかもしれない。
阿部「うた、今時間ある？」
『うん。大丈夫、阿部ちゃんこそ真夜中なんじゃない？』
阿部「言わなきゃいけないことがあってね」
『聞くよ』
阿部「ジャニーさんが、もう、持たないかもしれないって」
『………そっか、』
阿部「いつかはって思ってたけど、ここ数時間だって」
『……みんなは、大丈夫？』
阿部「うん。時々みんなで顔出してるし、先輩とかもよく会うよ」
『………そっか、みんな一緒なら安心だね』
阿部「………うた、仕事どうするの？」
『もしかして、また僕が仕事放り出して日本帰ると思ってる？
そんなに、俺がバカで学習しない奴だって思ってる？
やめてよ、阿部くんにそんな風に思われたくなかったです』
阿部「うた、なんかあった？変だよ」
『……ごめんね、取り乱した。忘れて下さい、許して！』
阿部「それならいいけど、時々電話ちょうだいね？俺じゃなくてもいいけど」
『そうだね、最近返事もちゃんとしてなかったから定期的にするよ』
阿部「暇な時でいいけどね？康二とか、どうでもいいこと送ってんじゃない？」
『意外とラウもだよ、嬉しいけどね。
あと、みんなに伝えて欲しいんだけど、2週間じゃ帰れなそう。
サマパラの数日前ぐらいに帰ることになるかも、ホントにゴメン。
振りビデオ送ってもらってもいいかな？』
阿部「全然大丈夫だし、照が形になってきたら送るって言ってた。
忙しいんだね、体に気をつけて」
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作者名：Radu | 作成日時：2021年5月21日 22時
