第35話 ページ1
部屋に戻ってしばらくすると半助兄さんが部屋に入ってきた。
『土井先生、どうしましたか?』
土井「Aの苗字についてなんだが...」
『あ〜それなら今まで通り伊賀のAとして生きようと思います。』
土井「いいのか?せっかくAという苗字があると分かったのに。」
『はい。今まで伊賀のAとして生きてきたから突然AAとして戻るのもちょっと違和感ありますし、私にはAという誇り高き名前があるだけで十分です。』
土井「そうか。では、ほかの者には伝えないでおくよ。」
『ありがとうございます。』
土井「うん。ゆっくりおやすみ。」
『はい、おやすみなさい。』
父「A、A!」
『父ちゃん?』
父「あぁ...」
母「大きくなったね。」
『母ちゃん...俺...2人を助けられなくってごめん』
母「うぅん、私達はAが生きてるだけで幸せなの。生きていてくれてありがとう。」
父「逞しく育ってくれてありがとう。Aには護るものが沢山あるんだ。強く生きるんだぞ?」
『はい。』
母「これ私たちから御守り。やっと渡せる...」
母が1本の紐を見せてきた。
『組紐?』
父「母ちゃんが編んだんだぞ〜!俺も隣でAが幸せになりますように〜って念を込めといた。腕出して。」
父が私の手首に組紐を結びつけてくれた。
『ありがとう。大切にする。』
母「そろそろ行かなきゃ...」
父「そうだな、もう朝になるし。」
『父ちゃん、母ちゃん、俺を産んでくれてありがとう。俺幸せだよ。』
父「こっちこそ、産まれてきてくれてありがとうな。」
母「...泣」
俺はそっと母を抱きしめた。
母「本当に大きくなったね。A...」
『ふふっ...母ちゃん、それしか言ってない...でもありがとう。俺頑張るからね。』
母と父は手を振って光の方へ歩いて行った。
『ふぁ〜夢か...この組紐だって...』
ってあれ?夢ならなんで手首に組紐が...?
ガラガラ
『わぁっ!!!』
土井「っ!?びっくりした...どうしたんだ?急に叫んで...ってその手首のどうしたんだ?」
『信じられない事に父と母が来て父が私の手首に結んでくれたんですよ』
土井「なんとも信じ難いが...それって伊賀くみひもだろ?」
『伊賀くみひも?』
土井「伊賀の女性は幼い頃から躾の一環として組紐を行っている家系が多いと聞いた事がある。すごく丁寧に編まれているし、Aの母親は素敵な人だったんだね」
『素敵な贈り物をくれる美しい女性です。』
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作者名:はるか | 作成日時:2022年12月30日 17時