桜麗華学院の〈桜国〉

18話 ページ44

──Side赤井


何も起きない。起きるはずが無い。

だって紛れもなく俺は鬼だから。鬼が鬼を捕まえたって何も変わらないだろう？

作戦は成功だ。この五人の中で俺と智子が鬼だと言うことが分かった。でも──

「あーあ、びっくりしたわ。
真理子、この子は鬼じゃなかったわ」

そうか、自分が子だと嘘を付こうとしているのか。

それで鬼に捕まえたって言っても効果ないもんな。

「その証拠は？まーいいや、面倒くさい。どっか隠れてようぜ、花蝶」

「おっけー！カッコ良かったよ♪赤井！」

その検証方法。
何の役にも立たねーけどなぁ！！

ニヤニヤしながら、俺と花蝶はダッシュで木陰に隠れた。新垣の驚いた顔が印象的だった。


このゲームが終わる直前に、俺は「捕まえた、花蝶」と言って花蝶を裏切るつもりだ。

でも……。

本当にそれでいいのか？
自問自答を繰り返す。それで、後悔はしないのか？

頭の中で複雑な気持ちが渦巻く。
まるで俺の中に天使と悪魔がいるみたいだ。

自分を守る為に誰を犠牲にするのか。
また、誰かを守る為に自分を犠牲にするのか。

「くっ……。花蝶、あいつらから離れるぞ」

「え？ああうん、分かった」


───今の花蝶の顔を見て決めた。

俺は鬼を移す事にした。

もちろん、✕✕に。



──数十分後──

『残り時間十分、残り時間十分、鬼の人は早急に子に鬼を移す事を心がけてください──』

アナウンスが鳴る。この声は姫の白雪か？

「俺達勝ったねー！」

「……花蝶」

ん？と首を傾げる花蝶。
ぶりっ子の姫香？に似てるな、畜生。

「俺、ちょっと真理子に用が──」


『臨時ルール追加ー、臨時ルール追加ー、
子二人は手を繋ぐと無敵になれるルール追加ー』

「えっ、何も聞こえなかった……よ？」


臨時ルール追加。
やっと来たか、新しいルールが……！

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