桜麗華学院の〈桜国〉

16話 ページ42

──Side智子

カードの中身は鬼。そうね、ありがたいわ。

だって、私にはどうしても潰したい相手がいるもの。

ゲーム開始までまだ時間がある。私は姉の真理子の方に近寄り、純粋な妹の【フリ】をする。

「真理子、子だった？」

「ああ、もちろん！お前はどうだった？」

「ふふ、安心したよ、私も子だから」

嘘。口から出るものはすべてが嘘。

この世に真実を貫き通して生きて来れた人なんていたのか？と疑うほどに私は嘘を愛している。

「じゃあ、ゲーム頑張ってね」

「待て、アタシと一緒に逃げないか？これでもアタシ、マラソン大会は一位以外獲った事ねーんだよ」

ふふふふふ。

想定内の展開。待ちわびた展開。

これで真理子は裏切り者の私を軽蔑する。もしかしたら嫌うかも？恨むかも？憎むかも？

胸がゾクゾクする。
この感覚がクセになる。

だから──嘘をつくのはやめられない。


──Side新垣

ようやくここまで進めたけれど、正直ここで自分が終わる気しかしない。

だって俺、本当は引きこもりで休みすぎだったから退学させられたし。だから体力無いんだよね。

貰ったカードは子。
もうどこかに隠れていようかな。

隠れるのは得意なんだよね。
ははは……。


「それでは、ゲーム開始！
鬼はなるべく気付かれない様に気を付けて……」


女王さんの声が響く。
姉妹は一緒に、赤井達も一緒にいる。

俺は独りぼっち。
やっぱり仲間なんていない。

はぁ、とため息を付き、取り敢えず木陰まで歩いた。どうせこんなゲーム、詐欺なんだから。

「よぉ」

肩が震える。もう誰かに気づかれた！？

「アタシ真理子。で、コイツは妹の智子。
……実はさ、アタシら『鬼』なんだぁ？」

早速終わった、と思う。

「さあ、早く逃げないと捕まえますよ？」

「決断をしたほうがいいぜぇ」

何を迷ってるんだ、俺は。

早く、早く逃げなきゃ！

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