桜麗華学院の〈桜国〉

17話 ページ21

次の日、木曜日。

あたしが桜国の侍女でいられるのは後二日。てか、まあもう永遠の桜国の人になるんだけどっ。

新しい女王様として──。

女王様になったら、まずは大輔以外の桜国の人をぜーんぶ退学！消し去る！！

そしたらラブラブになってぇ……くふふ！

ドアを開けて、皆んなに好かれる声で「おっはよー！」と言う。そして広がっていたのは、


全員があたしの事を無視する、残酷な光景。
……なんなの？

「ねぇ、おはよってば、百合ちゃん」

「は？話しかけんなし、クソが」

「え──？ねぇ、真田くん？悠斗くん？」

「ブスが移るわ、そっち行けよ」

……これは、夢か。そっか。
あの女が憎くて夢を見てるんだね。

頬をつねる……うん、痛くない。そうだよね、そうだよね。じゃあ、ここから離れよう、うん。

「夢じゃないわ。声に出てるわよ、バレバレ。さあ、侍女さん、教室に入りなさい？」

憎き女王が立っている。


「うるさいわね！ちょっとぉ、あたしは今夢見てるの！現実だなんて言わないでくれる？」

「現実から去るのも、いい加減にしなさい」


あたしは蛇に睨まれた蛙みたいに動けなくなった。だって、あまりにも女王様が恐かったから。

「───っ」

「さあ、貴方は立派な立派な桜国の一員よ？今日も沢山の人が貴方を『虐めるのを』待っているわ」

「な……んな……の……？」

昨日はあたしに優しかったし、それより前はあたしは酷い扱いを受けていた。そして、今日もそうだ。

どうしてこんなにコロコロと態度が変わるの？

「どうして、そんな事が……」

「ようやく改心する気になったかしら？月雪コーポレーションは潰れ、親はいない。悲劇のヒロインね」

「そんな事言わないで」

「もはや貴方の隣にいるのは大輔だけよ」

「うん……そーだよねっ！わざわざ自分から言うなんて、よっぽどあたしに嫉妬してるんだねっ♪」

───ガタッ

何かが壊れた音がした。教室の方を見る。



あぁ────声が出ない。あたしの机が、……。

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