4.賢い逃亡 ページ5
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結論から言う。
この作戦の第1関門、
夜蛾学長による入学面接 には、
……なんと合格。
つまり、今日から私は
晴れて呪術高専生になったのである。
そう。
今すぐ決断できないのなら
引き延ばしてしまえばいいじゃない、ということで。
名付けて、【卒業まで待ってくれませんか】作戦。
これなら考える時間はたっぷり取れるし
明確な期限付きで最終地点が見えているから
互いにとって楽なはず。
我ながら名案だった。
ちなみに。
夜蛾学長の問いかけ、
“お前はなぜここに来た”には
『結婚を先延ばしにしたいからです』
と正直に答えたら、あっさりOKが出た。
しかも去り際に激励と同情の言葉を頂いて。
何も言っていないはずなのに
明らかな憐憫を含んだ声で励まされれば
いろいろと察するというものだ。
◇ ◆ ◇
「…珍しいな、A」
『恵?』
見慣れてきたばかりの黒い制服姿。
久しく顔を合わせる幼なじみが
にこりともしないで立っていた。
……いつものことだけれど。
「一人で来たのか。五条先生は今いないだろ」
『うん。出張だって昨日聞いた。
恵もおつかれさま、かな?』
「いや、別に任務帰りなわけじゃない」
『そっか。
久しぶりに差し入れ持ってきたから
家入さんのとこに預けてあるよ』
「もう受け取った。
…そんなことより、これ」
『わっ』
投げるように渡されたのは、小さな紙袋。
ふわっと宙を舞ったそれを危なげなく受け取る。
『これは──』
「誕生日だったろ。昨日」
『え、うん』
「だから、その……プレゼント」
ぼそっと呟かれた一単語を
無駄に良い聴覚が拾い上げる。
嬉しいのと同時に面白くもあって、思わず
くすりと笑った。
『恵がプレゼントなんて! 珍しいね?』
「っ、うるさい。誕生日だけだ、こんなの」
『中身見ていい?』
「勝手にしろ」
『ふふ、ありがと』
そっぽを向いてしまった彼に礼を言い
わくわくしながら開封する。
___よりも早く。
「へえ、恵からのプレゼントかぁ。
いいね、青春っぽくて。」
『……えっ』
気配ゼロ、予兆ゼロ。
壁のような長身が、いつの間にか背後に立っていた。
『……えっ、と?』
「やあ、ただいま! 恵、A。」
今はできるだけ会いたくなかった人。
しばらく帰ってこないはずの五条さんが、いた。
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Sn(プロフ) - プスメラウィッチさん» コメントありがとうございます。五条悟オチです。長めのお話になる予定なので、頑張って完結させたいと思います。 (2021年8月26日 22時) (レス) id: 812f073419 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年8月25日 23時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
Sn(プロフ) - Spicaさん» ありがとうございます。励みになります。 (2021年8月25日 14時) (レス) id: 812f073419 (このIDを非表示/違反報告)
Spica(プロフ) - とても面白いです!続き期待してます! (2021年8月25日 14時) (レス) id: 68c958f74e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Sn | 作成日時:2021年7月24日 16時