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3.無謀の天秤 ページ4

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「それで、漆葉はどうしたいんだ」

『…どう、って』


そう聞かれてはじめて自分の意思を省みる余裕が
全くなかったことに気づく。

固まってしまった私に
家入さんはもう一つ、別の質問を投げかけた。


「じゃあ逆に。その提案はイヤだった?」

『……イヤ、というか。
 あまりに急なことで。正直、困ってます』

「なるほど。イヤだから断りたい、ではないのか」

『うーん。でも、……えっと。』

「“どちらにしろ、今すぐに決断は下せない”
 ───って感じ?」


少しためらって、頷く。
ふうん、と椅子の背もたれに寄りかかる家入さん。

しばらく沈黙の間が続いた後
ぽつりと家入さんが呟いた。


「それ一番難しい道だね、漆葉。」

『……そう、ですよね』


イヤと言うより、困る。
頭も心も追いついてこない。

軽々しく了承していい話ではないし
中途半端に断っても五条さんは納得しないだろう。

前々からの計画なら尚更。


『いっそ逃げようかとも思いましたけど
 あまりに無謀すぎて、やめました』

「英断だ。
 君じゃ、あっという間に捕まって終わりだろう」

『実は…体験談があって』

「へえ?」

『昔、五条さんと約束した門限を
 破っちゃったことがあるんですけど』

「うわ、ホラー」

『暗がりの中、いつの間にか後ろに立ってました。
 気配ゼロで。』

「怖」


夏にはまだ早いよ、と言いながら
目を向ける窓の外。

やや途方に暮れながら景色を眺めた。



風薫る5月。
私の好きな季節だ。
初夏だからか、青々とした木の葉が眩しい。


生い茂る森に囲まれた不思議な学校。

異形の怪物と戦うための力を持つ人たちが
人生に一度の青春時代を過ごす場所。


こんなときに。
ふつり、と忘れかけていた夢が湧き上がる。









初めて“呪術”を目にした日。


心に浮かんだのは

驚きでもなく、感動でもなく、
自らの未来を重ね合わせた理想像。


“いつか、私もできるようになりたい”と。


傲慢にも、そう思った。 ──── 憧れた。









『……思いつきました。いい方法を』

「本当?」

『はい。これなら、きっと』


少しは上手くいくはずです、と頷く。
若干浮き足立つ心は、悟られないように。

半信半疑な家入さんを真っ直ぐ見つめて、尋ねる。
最初の足がかりとなる一言。


『夜蛾学長は今、いらっしゃいますか?』









不思議な力に魅せられた少女が密かに抱いた夢。

この際、叶えてしまおう。




.

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設定タグ:呪術廻戦 , 五条悟 , 恋愛   
作品ジャンル:アニメ
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Sn(プロフ) - プスメラウィッチさん» コメントありがとうございます。五条悟オチです。長めのお話になる予定なので、頑張って完結させたいと思います。 (2021年8月26日 22時) (レス) id: 812f073419 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年8月25日 23時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
Sn(プロフ) - Spicaさん» ありがとうございます。励みになります。 (2021年8月25日 14時) (レス) id: 812f073419 (このIDを非表示/違反報告)
Spica(プロフ) - とても面白いです!続き期待してます! (2021年8月25日 14時) (レス) id: 68c958f74e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Sn | 作成日時:2021年7月24日 16時

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