17.元通り ページ19
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年に一度の交流会。
……には、出られなかった。
熱中症&夏風邪で倒れたのが
ちょうど2週間前。
外出禁令は解除されたものの
授業や修練に励むにはまだ早いと見送られ。
同級生や先輩たちがバチバチやっている頃
私は部屋で悠々自適に過ごしていた。
昨日は寮まで地響きが届いてきたので
相当ガチなのかと思いきや。
実は特級呪霊乱入ハプニングの余波だった、と
昨晩五条先生から聞いた。
……参加しなくてよかった、と
少し思ったのは内緒だ。
◇
傾いた日が沈み始める。
コンコン、とドアを叩く音。
きっと二人だろう、急いで扉を開けた。
『お疲れ様』
「あー、疲れたも疲れたわ」
「本当にな」
いかにもくたびれた顔をしている恵と野薔薇。
揃ってドア枠にもたれかかったまま、動かない。
『……えーっと。
無理して来なくてもいいんだよ?』
「いや、今日は理由がある」
『? どういう───』
「虎杖悠仁っす! 運良く生き返ってきました!」
突然の乱入者。
パチ、と瞬き一つ。
二つ。
三つ。
『───え?』
「オマエ…少しは空気読め」
「そういや、昨日もこんな調子だったわねコイツ。
一周回って腹立ってきたわ」
「いやだって、
サプライズ登場は派手な方がいいだろ!?」
「死んだと思ってたヤツが派手に登場して
喜ぶバカがどこにいんのよ」
見覚えなんてありすぎる顔。
もう、ここにいないはずの人なのに
その面影はまさしく。
『悠、仁?』
「久しぶり、漆葉」
ぱっと手を挙げて、にかっと笑う彼。
記憶の中の笑顔と重なった。
間違いない、
『……ほんもの』
湧き上がってきたのは、安堵。
それと入れ替わるようにして
目の前に立っていた悠仁がうろたえ始めた。
「あれ…? 漆葉……泣いてる?」
『…? 泣く?』
半信半疑で自分の頬に触れると
指先に冷たさを感じて驚く。
『…ほんとだ』
「え、えぇーっと、」
「あーあ。女泣かせるとかサイテー」
「お、俺が悪いのか!?」
「こっちに話を振るな……」
慌てる悠仁に、追い打ちをかける野薔薇。
それから、静かに困惑している恵。
不意に想起される日常のかたち。
欠けたものが戻ってきた。
その充足感たるや、説明するべくもない。
『だい…じょうぶ。
ちょっと、びっくりしただけだから』
証明を。
ぼやける視界もそのままに
できうる限りの笑顔を浮かべる。
『……おかえり、悠仁』
また会えてよかった。
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Sn(プロフ) - プスメラウィッチさん» コメントありがとうございます。五条悟オチです。長めのお話になる予定なので、頑張って完結させたいと思います。 (2021年8月26日 22時) (レス) id: 812f073419 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年8月25日 23時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
Sn(プロフ) - Spicaさん» ありがとうございます。励みになります。 (2021年8月25日 14時) (レス) id: 812f073419 (このIDを非表示/違反報告)
Spica(プロフ) - とても面白いです!続き期待してます! (2021年8月25日 14時) (レス) id: 68c958f74e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Sn | 作成日時:2021年7月24日 16時