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14.星と青の空 ページ15

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ふっと意識が持ち上がり、瞼を上げる。

見覚えのある木の天井がぼんやり見えた。

寮の、自分の部屋。
窓の外はまだ暗い。


異様にだるい体を起こす。

物音を立てないように、そっと足を下ろして
なんとか立ち上がってみる。

…が。

あっという間にふらついて
タンスに手をついてしまった。


『…!』


ガタン、と壁とタンスのぶつかる音。

と同時に、
あまりにも良いタイミングで部屋の扉が開く。


「こーら。病人はちゃんと寝てなきゃダメでしょ」


案の定、そこにいたのは五条先生。

何か言うよりも前に抱えられ、
瞬く間にベッドへと戻される。


『病人、って』

「硝子が言うには、熱中症&夏風邪のタブルパンチ。
 免疫力が有り得ないくらい落ちてる、ってさ」

『…かぜ』


なるほど、どうりで。
暑いのに寒くて、さらに尋常ではない怠さ。
ただの夏バテではないわけだ。


「というわけで、しばらくベッドから離れるの禁止。
 訓練もひとまず中止ってことで」

『え、でも』

「“でも”も“だって”もなし。今回はね」

『……おこって、ないんですか』

「え? 怒ってほしい?」


まさか! …と顔に出ていたのか。

冗談、と先生は笑いながら言って
私の頭に大きな手をのせた。


「今は楽しいことだけ考えて。
 そんでもって、ちゃんと休むこと」

『……』


楽しい、こと。
楽しかったこと。

思い出。


『……五条、さん』

「ん?」

『星が…見たいです』

「…今はダーメ。治ってからね」

『じゃあ目が見たいです。五条さんの』

「僕の目?」

『最近見れてなかったので』

「…へえ〜?」

『だめですか』

「いやいや、全然いいよ」


そう言うや否や
五条さんはするっと無造作に目隠しを外す。

途端に、きらりと輝く青さがあらわになった。
ずっと変わらない綺麗な目。

それが“六眼”という特別なものであることも
今の私は知っている。


「満足?」

『あと、すこし』

「あはは、珍しいねぇ。
 そんなにこの目が好きなのかな?」

『すきですよ』


特に考えず口にした。

すると。
急に、五条さんの時間が止まって
六眼が伏せられてしまう。


「はぁ……そう来るかぁ………」

『…?』

「はい出ました無自覚」


瞼が重い。

発言の意味を聞きたくても
暗闇が絶えず手を引っ張ってくる。


「…ま、今はいいよ。まだ許せる」


間際。もう一度だけ視線が絡む。


「おやすみ、A」


きれいな星と青の空。
夢で会えたら、きっと。


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設定タグ:呪術廻戦 , 五条悟 , 恋愛   
作品ジャンル:アニメ
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Sn(プロフ) - プスメラウィッチさん» コメントありがとうございます。五条悟オチです。長めのお話になる予定なので、頑張って完結させたいと思います。 (2021年8月26日 22時) (レス) id: 812f073419 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年8月25日 23時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
Sn(プロフ) - Spicaさん» ありがとうございます。励みになります。 (2021年8月25日 14時) (レス) id: 812f073419 (このIDを非表示/違反報告)
Spica(プロフ) - とても面白いです!続き期待してます! (2021年8月25日 14時) (レス) id: 68c958f74e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Sn | 作成日時:2021年7月24日 16時

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