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水居 side
椅子と机がひっくり返る。
ふざけんな、という与謝野姐さんの慟哭が
地下シェルターの空気を震わせる。
養父だってわかっているはずだ。
自分だってそれを望んでいるわけじゃないし、
なにより、
与謝野姐さんの“心”があまりにも蔑ろになっている。
その会話を直に聞くことは叶わなかったが、
わかる。
探偵社の社長は、反対するだろう。
自分だって反対だ。
姐さんに養父の助手は耐えられない。
姐さんは優しすぎるのだ、
あの摩耗と退廃の惨状が姐さんを一度壊したのだ。
姐さんが養父につかみかかるのをただ、眺める。
・・・・・・わからないのだ。
誰が悪い? 自分はどうすればいい?
広津「
入り口にこの無線機が」
広津さんが差し出した無線機が
こちらが聞こえる範囲にあると察知したのか
音を発し始める。
『よう 元気か
谷崎「この声・・・・・・フィッツジェラルド!?」
『久しぶりだな
窮状を笑ってやりたいところだが
時間がないので手短に話す
宮沢賢治と谷崎潤一郎の二人がはしゃぎ声を出すのを
横目に
養父がフィッツジェラルドに問いかける。
森「・・・・・・少年がここに来る理由は?」
養父は、疑っている。
この男が敵だと、軍警と結託していると。
『取引だ。
俺の為に治癒異能を使え
対価に探偵社復活の糸口となる情報をやる。
集合は二十分後五番通りで・・・・・・ではな』
森「待て 何故 お前はこの隠れ家の場所を知って──」
ぷつ、と無線の通信が途切れる
・・・・・・罠、ではないだろう・・・・・・。
あれは勝ちそうな側に味方する男だが、
部下を大切にもする男だ。
スマホの着信が鳴る。
自分のだ、着信主は水菜。
なるほど、なるほど・・・・・・。
水居「統合騎士団の会議招集、っすか」
電話には応答せず
メッセージアプリで了解の旨を送り
顔を上げる。
与謝野姐さんと目が合う。
水居「大丈夫。
探偵社は勝つ、自分たちが勝たせる。
統合騎士団全員を説得する機会ができた。
──養父、わかってるくせに
探偵社の意思は固い、
自分たちが何を言っても止まらない。
止まってくれない。」
もっとも、
水菜がこの状況を正しく理解できていないわけもないが。
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作者名:クラウン | 作成日時:2023年7月22日 4時