追憶 月桂樹の守護者 ページ12
優鶴side
「────！」
歌を歌うのが好きだ。
今の俺には、それくらいしかなかった。
この想いを、
どう歌うのが正解かは、わからないけど。
俺が歌うたび、
この複雑な、不良の溜まり場みたいな観客が
マシになっていくように思えた。
前回も、今回も。
この世は『ことごとく』クソだ、
複雑すぎて、重すぎて、どうにも呼吸ができない。
なら、世界『が』単純になればいい。
俺が進路を決めた直後から、
TV局から面白半分に捲し立てられて。
･･････スタァとアイドルの両業界が不仲なのは、
消費しているものも、
生み出すものも同じなのに
『全く別』のシステムを使っていることが原因で、
アシストありきのスタァを
アシストなしのアイドルが煽ったことが起因、
･･････だと聞いている。
プリパラアイドルは、アシストを受けている分
スタァ寄りで、
アイドル業界中からは若干線を引かれているし。
･･････くだらない、と心の底から思った。
それでも、口に出して批判なんてできない。
『プリズムワールドの守護者』だから、
その立場と特殊性により、
『プリズムワールドの使者』以上、
『女神』以下の、割と中途半端な立ち位置をして、
『プリズムのきらめき』を還元する力を有している、
『使者』よりも『きらめき』を多く生み出せる。
それだけで、
『特例』の一部権限はシステム運営同等、
又はそれ以上、
なんて、出過ぎた真似だろう。
そう、『プリズムワールド“の”守護者』。
俺が守っているのは、プリズムワールドだ。
女神達を護るのは、
いなくなると『基盤』が緩むから。
それだけで。
･･････両方の業界から、
手を取り合える人材を見つけなければ。
業界どうしの争いなんて、
客は望んじゃいないのだ。
ただ歌って踊る『パフォーマンス』がみたいだけ。
それぞれの『推し』が
仲良く画面に写ればいい。
見ている側からしたら、
アイドルとスタァのやり合いなんて
『どうでもいい』のだ。
心底どうでもよかった。
俺は歌えて、踊れればそれで。
･･････なにが、したいんだろう。
漠然とした『使命』と、“約束”を
自分の中で反芻させて、
俺への票である『色』に染まった会場の人海を見た。
隣で歌っていた『前王』が、
静かに崩れ落ちていた。
『スタァ』の友達と競い合っていた時の満足感は
何もない。
ただ虚無な現実だけが叩きつけられる。
優鶴「ほんと、くだらない」
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作者名：クラウン | 作成日時：2022年3月17日 8時
