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この人は何を言ってるの…
彼は淡々と" 可愛い "と言ってくるけど
誰にでもそんなことを言うの？
…いや、そんな人じゃないって知ってるけど。
これ以上 期待させるようなことしないでほしい。
純「ま、なんでもええけど、ほら撮るで」
「あ、やだっ」
逃げようとしたけど、
すかさず彼に腰に手を回される。
「…っ！」
純「顔赤いですよ〜Aさん、はい、チーズ」
シャッター音と共に、撮られたその写真は
真っ赤な顔の私と、からかって楽しそうな純喜くんが
しっかりと映っていた。
回されていた腕から解放されて
はあっと息を吸い込む。
そんな私を見て 面白そうに笑っている純喜くん。
ほんとに余裕なんだ、
やっぱり彼からしたらただの友達なんだろう。
「………純喜くん、ずるいね」
純「うわ、意味もわからへんのに使ってるやろ」
「しらない、もうこの言葉は勉強しないから」
純「なんか怒ってるし」
きっと純喜くんを睨むと、猫みたいと笑われた。
そのままたわいも無い話をして
気付けば事務所に着いていた。
家まで送るって言い出してきたけど、
頑張ってそれだけは断った。
事務所についたら本当に夢の終わり。
元からそう自分の中で決めてたもん。
化粧品を取りに行き、また下に降りると
タクシーが既に止まっていた。
「純喜くんの？」
純「Aの。暗いから歩くのはあかん」
「え、大丈夫だよ」
純「ええから」
背中をグイグイ押されて、ドアの前まで追いやられる。
純「楽しかった、ありがと」
「…うん、」
触られてた背中が少し熱を持ってて、
こんなにも寂しいと思ったことは無いほど
心がぽかんと穴が空いてる。
純「ちゃんと家の前まで送ってもらいや？」
「………うん、純喜くん」
純「ん？」
「………………あの、」
" 好き "
そう言いかけたけど、
「ありがとう、私も楽しかった」
その二文字だけは伝えれなかった。
純「なら良かった、また明日」
「うん、明日ね、おやすみなさい」
純「おやすみ」
そう言って、ドアを閉められた。
小さく手を振ると、
いつもの満開の笑顔で 手を振られる。
タクシーが進み出して、純喜くんは見えなくなった。
あんなにもこの気持ちに蓋をしようとしたのに
今では溢れて苦しい。
家に着くと、もうお金は貰っていると言われ
感情のぶつけようの無さに涙が出そうになった
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作者名：ナビ | 作成日時：2021年9月10日 18時
