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「A、ものすっっごい綺麗な子だった…!!」
「あはは、わかるわよ。私も初めて会った時びっくりした」
美咲は笑いながら共感の声を上げる。
全体的に色素が薄いが、海のように深い青の瞳はサファイアのようで魅了される。アイドルになるのだからある程度容姿は整っているのだろうとは思っていたのだが、予想を遥かに上回る儚げな美少女だった彼女。例えるなら水の精霊ウィンディーネだろうか。
そんな会話を美咲と交わしているとAが帰ってくる。それほど長い電話ではなかったようだ。
「ごめんね。で、これから何するの?」
取り敢えず、お互いのことを知ろうという美咲の提案で質問タイムが始まる。
誕生日はいつだとか、どこの出身だとか、趣味はなんだとかごく普通の情報だけれど。
実緒はその質問の中でひとつの情報に驚く。
彼女、億宮Aは16歳だというのだ。
それも、数日前までは15歳であったと。
Aは大人びていた。実緒よりは多少低いが、平均よりは高いであろう身長に端正な顔立ち。そして、彼女の瞳にはこの世界の不条理さを知ってしまっているような影が宿っていた。
恐らく、自分より年上だと言われても違和感のない容姿だ。
しばらく会話を交わしていると、Aが思いついたように言った。
「…なんか、実緒の声ってブラームスの39の15番みたいだね」
「うん?」
Aの唐突な言葉に実緒は戸惑う。なんだその暗号は。
「知らない?多分聞いたことあるよ」
Aはそう言って椅子から降り、設置されているグランドピアノの元へ歩き出す。
ピアノ椅子に座り軽く音を鳴らした後、深く息を吸ってからピアノを弾き始めるA。
なるほど、ピアノも弾けるのか。
実緒はAの奏でる音楽に耳を傾けた。
クラシックに詳しいわけではないが聞いたことのあるようなメロディー。…実緒はクラシックのピアノ楽曲は大体同じに聴こえてしまうのでなんとも言えないが。
柔らかい音の中にきらきらとした光が宿っているような音。優美な旋律に心を奪われる。
ピアノのことはわからないけれど、この表現力はかなりの練習を積んで得たものなのだろう。無知ながら、彼女のピアノ技術が高いことはなんとなくわかった。
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ドーナツ(プロフ) - 高沢さん» ありがとうございます〜!こちらはかなり不定期更新となってしまうと思いますが、本編共々よろしくお願い致します! (2020年5月30日 6時) (レス) id: f19df2fce1 (このIDを非表示/違反報告)
高沢 - 番外編…!ありがとうございます!!楽しみにしています!! (2020年5月29日 23時) (レス) id: a364a1dba9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ドーナツ | 作成日時:2020年5月28日 21時