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「では撮影は明日からですので、本日はもう休んで大丈夫です。明日は9時からですので、よろしくお願いしますー」
例の"海に行くロケ"で沖縄に来ていたDólce。
ギリギリ前まで仕事があった2人がホテルに着いたのは、もう既に日が傾きかけている頃だった。
「ちょっと散歩してくるね。寝てていいよ」
「新曲?手伝おうか?」
「とりあえず大丈夫」
Aは散歩が好きで泊まりの撮影になると頻繁に外に出る。
知らない土地では普通に危ないのだが、基本的にマメな性格からか、遠くに行く時や遅くなりそうな時はしっかりと連絡してくるので、実緒は今回も普通に送り出した。
あてもなく浜辺を歩く。
せっかく海に来たのだから、海を近くで感じたいと思ったからだった。
耳を澄ましながら歩く。
静かなように思えて波の音、砂を踏む音、控えめに聞こえる話し声、その全てが新鮮でなんとなくメロディーが湧いてくる。
小さく歌ってみようとしたその時。
「なああれ、億宮Aじゃね!?!?」
自分より十数メートル離れた所に立つその男性の大きな声で周りにいた数人が一気にAの方を向く。
まずい。
被っていた白い帽子を深めに被りなおして去ろうとしたとき、風は無情にもAの帽子を飛ばしてしまった。
「あー…」
幸か不幸か落ちた帽子に目立った汚れや濡れはなく、ホッと息をついたのも束の間。
Aの周りには少人数とはいえ、周りから見たら不自然なほどの人数がいた。
「本物!?」
「今日は仕事なんですか?」
「顔ちっちゃ!肌白ーい!」
とはいえAも人気アイドルだ。
ファンを蔑ろにするなんてことはできず、一人一人に丁寧に対応した。
「ありがとう、今日は仕事なんだ。新曲もそろそろだから楽しみにしててね」
口にした言葉一つ一つに反応してくれる様は嬉しいけれど、騒ぎに興味を持った人たちで段々と人数が増えてきた。
(…まずいな、そろそろ切り上げないと)
どう切り抜けようか考えていたその時だった。
「す、すみません!マネージャーです!これ以上はちょっと…」
そう言って割り込んで来た彼女は私の手を引いて駆け出した。
「逃げましょう!!」
戸惑いつつも彼女に引かれるまま共に走った。
「ごめんね、また会えると嬉しいな」
もう後ろにいるファン達にそう声をかけるとまた色めきだった声が上がった。
こうやって自分を好いてくれる自分のファンに感謝をしながら、Aはもう一度走り出した。
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ドーナツ(プロフ) - わあ…!ありがとうございます〜!!お友達さんとは仲良くなれそうです…!笑 嬉しいお言葉ばかり、本当にありがとうございます…!こちらこそありがとうございました! (2020年6月7日 12時) (レス) id: f19df2fce1 (このIDを非表示/違反報告)
via - 私の友達がアイナナ大好きなんですよ!しかも、推しが同じだったはず…言葉での表現の仕方が凄く上手くて、簡単に小説の光景が思い浮かびました。凄く面白かったので友達にもオススメしてみようと思います!イベントに参加して頂きありがとうございました! (2020年6月7日 9時) (レス) id: 124b642d9c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ドーナツ | 作成日時:2020年4月1日 0時