【すとぷり】最愛と親愛の果て

最良 ページ9

貴｢みて！なーくん！｣



時期を仮押さえしている式場に向かうと、私が1番楽しみにしていた光景がそこにあった。



純白のウェディングドレスが部屋の先までぎっしりと並べられている。



な｢ふふっ、あんまりはしゃぐと怪我しちゃうよ｣



大人の余裕、と言うやつなのだろうかなーくんは私の行動を楽しそうに見ている。



貴｢Aラインがやっぱり王道だよね……



でも肩の装飾はこっちが可愛いし…｣



ある程度決めてきたはずなのだが目の前にしてしまうと、そんなことはすっかり頭から抜けてしまうのだ。



な｢今日焦って決める必要は無いし、5着くらいまで絞っていこうか。


次に打ち合わせに来る時までに決めたらいいよ｣



(決めたらいいよ…)



なーくんの落ち着いた声に少し引っ掛かりを覚えた。



でもこんな時きっと、



(さとみなら、



私の横に立って自分のことみたいに悩んでくれたりしたのかな…)



ショッピングをした時、私の服をはしゃいで選ぶさとみをふと思い返す。



貴｢え………？｣



(なんで私今、さとみの事なんか)



(どうかしてる)



な｢次来る日が代表としての仕事がある日だから、車運転できるメンバーに付き添いをお願いするね｣



そんなことなど露知らず、なーくんはプランナーさんとカタログを開きながら声をかけた。



貴｢あ、うん……｣



一緒に行ける日がいい、なんてワガママ言えるわけない。



今日だってすごく忙しい中私のために開けてくれたんだ。



(不満なんて、無い)







帰りのタクシーの中少し薄暗くなった都心の景色に目を向けながら私はあることを思い出していた。



さ｢Aには、俺が夢を叶える瞬間に立ち会ってて欲しい。


らしくないと思うけど、お前がいてくれないとだめなんだ｣



近くに川の流れた見晴らしのいい思い出の公園で、



ベンチに座りながらさとみは照れくさそうに笑っていた。



いつからかあの公園は私たちにとって何かを伝えたい時、報告したい時に寄るようになっていた場所。



(あの公園は………)



今も変わらずあるのだろうか。



な｢A、明日俺はころちゃんと打ち合わせがあるから終わったら連絡する｣



なーくんのそんな何気ない一言で、



(明日、あの公園に行ってみようかな)



さとみとの過去を清算して、なーくんとのこれからを報告する。



それで終わりにしよう。

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