１０ ページ11
貴｢……えっ？｣
予想だにしない返事に私は瞬時に両の掌で顔を隠した。
赤くなる顔に比例して熱くなる顔。
べ｢僕は、ずっと＿｣
解くようにベルトルトが私の掌を握る。
(僕がこの世を＿＿最後に見る景色は＿＿いい)
ノイズ混じりの声が頭を反芻する。
べ｢えっ？？？！｣
ベルトルトの驚いた声にハッと正気に戻る、私の瞳からはボロボロと涙が溢れて頬を伝っていた。
私はこの記憶を取り戻すためにきっと生まれてきた。
貴｢ちがうの…私、何だか懐かしくて………｣
ベルトルトはそれ以上は何も言わず、触れた掌を優しく握っていた。
貴｢ここで大丈夫、本当にありがとう…色々と｣
しばらく泣き止むことの出来なかった私にベルトルトはハンカチを差し出して、｢悲しくないなら良かった｣と切なそうに微笑んだ。
べ｢ううん、僕こそ｣
気をつけてね、と手を振られる。
私も反射的に手を振り返し何となくベルトルトを見つめていた。
連絡先を聞けばもっと仲良くなれたかもしれない。
でも初日から連絡先を聞くのは流石に行き過ぎているのだろうか。
(リヴァイさんなら…きっとなにか行動するのかな)
追いかけようとした足を止め、私はマンションの中に入った。
・
リ｢帰ったか、ちゃんとうがい手洗いしろよ｣
鍵を開け靴を脱ぐと、ラフな服装に身を包んだリヴァイさんが出来たての料理を片手にこちらを見た。
リ｢ん？A、顔赤くねぇか｣
指摘されて先程のことを思い出した私は、｢先にお風呂入る！！！｣と洗面所に駆け込んだ。
おい、とリヴァイさんの落ち込んだ声が聞こえたが後でフォローをしよう。
貴｢はあ…｣
言われたようにうがい手洗いをして、服を脱ぐと浮かび上がる過去の傷跡。
(先生は、大人になれば消えるって、言ったのにな…)
そっと痛まない手術痕を上からなぞり、
(こんなの誰にも見せれないよ)
鏡の向こうで私は卑屈に笑ってた。
きっと私は大昔に大罪を犯した罪人で、その罪を現世で償っているんだろうと考えることを辞めれなかった。
リヴァイさんはカウンセリングの度に｢お前は悪くない｣と励ましてくれたのだが。
(私がこの記憶を思い出せないのも全て、許されてないから)
私が過去を知っても、
過去は私を許してはいない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 224人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もか。 | 作成日時：2023年11月13日 7時
