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嘴平伊之助さん 肆 ページ15

「なんで髪の毛こんなさらさらしてんだ。
掴めねぇだろこんなんじゃ」
「掴む必要ないよ…。結ぶ時だって櫛を使うし。」
「そういうもんか。」
「うん。
あとさらさらなのは手入れをしてるからかな。」

伊之助は片手いっぱいに髪をすくっては指に通して落とす。
それを繰り返して遊んでいた。

そして手入れをしている、と聞いたら不思議そうな顔をした。

「洗うのとちげぇのか?」
「うん。洗ったあとに髪の毛が傷まないように、とか触り心地が良いようにって考えて色々とやるんだよ。
あとは好きな男の子のために可愛くしていたい子もいるからねえ」
「んなめんどくせぇことすんのか、女は」
「んー…。どうだろう、しない人もいると思うよ?」
「Aはそう考えてやってんのか。」

肩に顎を乗せて、むすっと不満を隠さない顔をして伊之助は呟いた。
どこに不満な要素があったのだろう、とAは考えを巡らせた。
すぐにピンときて、Aは緩む口元を隠しきれなかった。

「何で笑ってんだ」
「ふふ。嬉しくて、かな。」
「あ?何がだよ」
「んー」

Aは後ろに体重を乗せてそのまま伊之助を背もたれにするように体を預けた。
そうすると伊之助は腕を前に回してぎゅうっと抱きしめてくれる。

Aはそのまま顔を上げた。
真下から伊之助の顔を見上げ、綺麗な瞳とパチンと視線を合わせた。
視界いっぱいに広がるのは、大好きな幼馴染みの顔。
お互いに何も言わず、じ、と見つめ合うこと数秒。
Aは首が痛いなあなんて薄く考えながらにっこりと笑った。

「伊之助のために、って言ったら嬉しい?」
「俺のため?俺はそんなことしねぇぞ」
「違うよー。」
「じゃあ何だ。早く言え」

唇を尖らせて、伊之助はまたきゅっと眉を顰めた。
そんな仕方がなくてかわいい恋人の頬にそっと触れて、じっと美しい瞳を見つめた。
吸い込まれそうな感覚に陥りながら、Aは言葉を紡いだ。

「伊之助に可愛いって思われたいから」
「……は、」
「ふふ、私は伊之助の恋人だもん。伊之助のこと大好きだし…。
そんな人に可愛いって思われたいのはおかしなことじゃないでしょ?」

嘴平伊之助さん 伍→←嘴平伊之助さん 参



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三色 ─みしき─(プロフ) - 煉獄推しさん» 申し訳ありません。只今リクエストは受け付けていません。 作品を読んでくださりありがとうございます (2021年7月4日 10時) (レス) id: d6f8835509 (このIDを非表示/違反報告)
煉獄推し - リクエストオッケーですか?オッケーなら、返信が来たときに送りたいのですが… (2021年7月2日 18時) (レス) id: c685ed7b70 (このIDを非表示/違反報告)
すい(プロフ) - みしろさん» いえいえ、拙いだなんてそんな!みしろさんの作品大好きです!いやいや、私こそ様なんて付けなくていいのですよ…!あわわ、ありがとうございます…!変則的なので不安ですがもそもそ活動していきます…! (2019年7月4日 2時) (レス) id: ebec16ed5f (このIDを非表示/違反報告)
みしろ(プロフ) - すいさん» なんと……!!私の拙い文章を読んで下さっていたとは!!有り難き幸せ!!様なんて付けないでください!!むしろ此方が様を付けなければいけないような……(?)すい様のペースで良いのですよ…… (2019年7月4日 2時) (レス) id: 509e58e731 (このIDを非表示/違反報告)
すい(プロフ) - みしろさん» みしろ様 ひょえ〜ッッ!ありがとうございます…!実はこっそりみしろ様の作品を見てましてひっくり返りそうになりました…。ありがとうございます、まったりと更新していきますね(´▽`) (2019年7月4日 2時) (レス) id: ebec16ed5f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:三色 | 作成日時:2019年6月17日 3時

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