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童磨さん 壱 ページ27

「皆つれないなあ。またひとりで戻されてしまったぞう。」

幼子のように眉を下げて悲しむ素振りを見せ、うんうんと悩んでいたが
教祖は人の気配を感じてすぐに口角を上げた。

「やあやあ。今日はどんな人がお見えかな?」


教祖としての仕事が一段落したのか、童磨はグッと背伸びをした。
もう休んでいいよ、と周りの者に声をかけ、童磨自身も部屋へ戻った。

そこに居たのは、一人の少女。

「教祖さま!」

童磨を見つけた途端花が咲いた様な笑みを浮かべ、トタトタと小走りで走り寄る姿は
まるで迷子の子供が親を見つけたようだった。

「A。いい子にしていたかい?」
「はい!」
「うんうん。それはいいことだな」

ぎゅっと抱き着いてくる少女を抱きとめ、頭を撫でてやる童磨の表情は間違いなく『笑顔』であった。
それからは、Aと呼ばれた少女と童磨の二人だけの時間だった。

「今日すれ違った信徒の方……とても美しい女性だったんです!
私もいつか、あんな風になれるでしょうか…」
「Aは美人だからね、きっとなれるさ」

馬鹿だなあ、そんな大人になる前に
俺が君を、骨まで喰ってしまうのに。

それ、Aが綺麗と褒めていた簪を挿していた娘だろう。明日にでも喰べてあげて、極楽へと導くんだよ。

そんな言葉は飲み込んで、童磨はまたニコリと笑ってみせた。

「さぁ、今日はもう遅い。
寝る支度をしよう」
「…教祖さまは、また何処かへお出かけなさるの?」


沈んだ少女の声に、布団を整える自分の動きがピタリと止まるのがわかった。

「月が出ている時の散歩は気持ちがいいんだ
Aはまだ怪我が完治していないから駄目だよ。」
「治ったら、私も一緒に連れてってくれますか?」

ああ、そろそろ笑顔を作るのも疲れてきた。
優しく喋ってやるのも疲れてきた。
面倒くさい。
今はこの娘以外誰もいないし、ちょうどいい。

まず両腕を折って、両足はその辺の物で刺してやろう。
そしてAの話を聞いてやって、なんとなく気が向いたらその柔らかそうな唇に口付けてやろう。

ほら、人っていうのは
そういう時でも口付けを落とすんだろう?
何故そんなことになるのかは俺にはさっぱりだ。
面白いねえ。

なんとも面白くて、愚かだねえ。


童磨は、自分の顔から表情という表情が消えていくのがわかった。
枕を整えていたAが振り向いた瞬間。

Aは、目の前に広がる童磨の顔をただひたすらに眺めていた。

童磨さん 弐→←我妻善逸さん 弐



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三色 ─みしき─(プロフ) - 煉獄推しさん» 申し訳ありません。只今リクエストは受け付けていません。 作品を読んでくださりありがとうございます (2021年7月4日 10時) (レス) id: d6f8835509 (このIDを非表示/違反報告)
煉獄推し - リクエストオッケーですか?オッケーなら、返信が来たときに送りたいのですが… (2021年7月2日 18時) (レス) id: c685ed7b70 (このIDを非表示/違反報告)
すい(プロフ) - みしろさん» いえいえ、拙いだなんてそんな!みしろさんの作品大好きです!いやいや、私こそ様なんて付けなくていいのですよ…!あわわ、ありがとうございます…!変則的なので不安ですがもそもそ活動していきます…! (2019年7月4日 2時) (レス) id: ebec16ed5f (このIDを非表示/違反報告)
みしろ(プロフ) - すいさん» なんと……!!私の拙い文章を読んで下さっていたとは!!有り難き幸せ!!様なんて付けないでください!!むしろ此方が様を付けなければいけないような……(?)すい様のペースで良いのですよ…… (2019年7月4日 2時) (レス) id: 509e58e731 (このIDを非表示/違反報告)
すい(プロフ) - みしろさん» みしろ様 ひょえ〜ッッ!ありがとうございます…!実はこっそりみしろ様の作品を見てましてひっくり返りそうになりました…。ありがとうございます、まったりと更新していきますね(´▽`) (2019年7月4日 2時) (レス) id: ebec16ed5f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:三色 | 作成日時:2019年6月17日 3時

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