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Youside
スタッフステーションで仕事をしていれば、本日最初のドクターヘリ要請があった。
神奈川県の石ヶ浦マリーナで、クルーザーを海から吊り上げている最中に留め金が外れて落下し、運悪く居合わせた30代女性と子供に衝突。
横峯〈もしもし?A?〉
『なに?どうした?』
横峯〈ベットの空き、ある?〉
『白石先生に確認済み、
こっちはいつでも2人のお子さんとお母さんOK。』
横峯〈ありがとう。〉
暫くして、無線が聞こえてきた。
白石先生も手が空いてない様子で、私が代わりにとった。
藍沢〈A、聞こえるか?〉
『はい、聞こえます。』
藍沢〈横峯をフォローしてやってくれ。〉
『了解です。横峯先生、聞こえる?』
横峯〈うん!〉
『上肢は挙上してある?』
横峯〈できてる!ドレープかけ終わりました。
胸膜下に麻酔します。〉
『麻酔はしなくて大丈夫。すぐに切開して。』
横峯〈了解。〉
『胸膜まで大きく開いて。』
…大丈夫、横峯先生ならできる。
練習してきてるの、こっちも知ってるから。
横峯〈開きました。〉
『ペアンの先で胸膜を破って、それで脱気できるはず。』
横峯〈…了解。〉
『どう?』
横峯〈脱気の音が聞こえない。〉
『ヘリの中だから聞こえなくていい。バッグをもんでみて。』
横峯〈バッグ、軽くなりました。〉
『OK、脱気はできてる。』
横峯〈チェストチューブ入れます。〉
『肺を傷つけないように、ゆっくり、大丈夫。
横峯先生ならできる、ここまでできたんだから。』
横峯〈うん。〉
横峯先生は確かめながらチューブを入れていく。
横峯〈曇った…〉
冴島〈SPO2、95まで戻りました。〉
『成功だよ、チューブが抜けないように注意して。
ヘリポートで待ってる。』
私はやっていけるのか、と突然不安になった。
ねぇ…私大丈夫かな、山田。
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作者名:反町ゆうり | 作成日時:2023年11月29日 8時