小さな石ころは戦場の中で恋をした【時透無一郎】

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『………』


「…っはぁ……はぁ………」




一旦手を止め、息を整えまた刀を振る

私はしばらく声をかけられずにいた


必死に鍛錬をしている時透君を
後ろから傘を指した私が見つめる

話しかけようにも今はなにも聞こえない


3分の間がとても長く感じた






「……っ…時透様…!?まだ体はお治りになって…」




その声ではっとする

そうだ、時透君は傷も治ってないのに修行しているんだった
でも、どうしてだろう。止める気になれない




「……」



あまね様があの子を止めている
気持ちと体が変だ。手足が動かない











──

───

────






夕立(ゆうだち)が


『──ねぇ、時透君』





思い出させる


『そろそろ…』





あの時を


『傷も治ってないしさ?』





姿が重なる


『一旦…やめよ』





己の影と


『…悲しくなる』













「お前に…」


怒りで震えた声
知っている
その声に悲しみも混じっていることを



「お前に何がわかるって言うんだよ!!」


私も思った
どんなにねぎらいの言葉をかけられても悲しさは消えないんだよな
自分が怒ったってもどうにもならない




「僕が何をしようが勝手だろ!傷が治ってないなんて俺が一番わかってる!!」


振り向いて私の目を見ながらそう言う時透君
悲鳴嶼さんの目には私がこういう風に映ってたのかな




「わかったらさっさとどっか行け!!」


弾けたようにそう叫ぶ
わかるまで居ていいんだ…
優しい…私はもっと酷いことを言ったかもしれない
でも、私は…











『私…わかってるよ。』


うん、わかってる。ちゃんと




『…まぁ、普通なら声かけないかもしれないけどね。あいにく、私はこういう性格だからさ』


この性格はお姉様譲りかな




『時透君、今は生きなきゃ駄目なんだよ
誰かがくれた命を、誰かが愛してくれた命を大切にしなきゃ』


誰かが愛してくれた命…自分で言っておいてなんだけど…
私、愛された事あるのかな







「…………」


『ね?時透君は私と違う心の優しい子だからさ、私と同じような事になってほしくないんだよ。部屋に戻ろう?包帯も全部替えてあげるから
私にできることは、これっぽっちしかないけど』



近づき、時透君を傘に入れる
振り払われてしまうかもしれないと思ったけど、そんな事はなかった



「…えっ…今……」


『ん?………あ、もしかして相合い傘嫌だった…?』


「違う、そうじゃなくて…今何て言った」


『えー?…………………相合い傘?』


「違う………」

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