小さな石ころは戦場の中で恋をした【時透無一郎】

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「先程まで無一郎と話をしていたんだけど……ふふ。やっぱりこの事は内緒にしておこう。取り敢えず、無一郎が君と話をしたがっていたから行っておいで」


『……?
わかりました。わざわざ来ていただいてありがとうございます』


「構わないよ。そうだ、無一郎の傷に当てている包帯や布も替えてあげたらきっと助かるだろうね」


『わかりました…!頑張ってみます…!』


「うん。Aならできるよ」


『はい!ありがとうございます!』







お館様に一礼し、包帯などが置いてあるところへ向かう

樽に必要なものを入れていく



なんか…話を内緒にされた…何だったんだろう?お館様が笑ってて私も心が穏やかになったなぁ…

えっと…包帯と布と……
頬がかすり傷だらけで汚れていた気がするし、おしぼりも一応持っていこう

あまね様に、時透君の調子が良さそうな時に薬を飲ませるようにも言われたから忘れずにしなきゃ
確か薬は時透君の部屋にあったはず



袖が邪魔なのでたすき掛けをしてから樽を持って時透君がいる部屋へ向かった





『…失礼します。入りますよ』


「……………」


『……あ、あれ……?』


「………はい」





返事が少し遅かったから寝てたのかな…
だとしたら申し訳ない…起こしちゃったのかも…



部屋に入ると、彼は上半身を起こして外を眺めていた

長い髪が風で揺れる
初めて見たときから思っていたけど、男の子にしては長い髪の毛でさらさらしている





『あ…まだ起きないほうが……傷だらけだし、体に障るかも』


「………」





時透君の方へ近寄ると、
彼は振り向いて私をうつろな目で見た後、無言で枕に頭をのせた

口数が少ないのも無理はない。
身内を鬼にやられ、記憶を失っているのだ
お館様も言っていたように、今は生きることだけを考えてほしい





『1人になりたかったらいつでも言ってね
私は君の力になりたいの。私のことを忘れてくれたって構わないから』


「…………」


『もう血は止まってるって聞いたし、まずは傷口に当てている布を替えようか。ついでに包帯も』


「………ぁ…」


『いいよ、無理して声出さなくても
私がおしゃべりなだけだから!とにかく安静にしてて』






はじめに右腕の包帯をとった

血が滲んでいてやっぱり痛々しい
現段階では血を見る機会なんてほとんど無いからまだ慣れない
だけど今後、慣れていくのかなと思うと私は本当に難しい道を選んだと思った
だけど後悔はしていない

傷口を清潔な布で押さえ、包帯を巻く
血は止まったと言っても多少は出るし、傷口は塞がっていない


どうか時透君の傷が治りますように
そう願いながら着々と進めた

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