さん ページ4
なんなのこれ。
目の前に広がる土、土。たまに雑草と小石。自由がきかない体。背中にのし掛かる重力。
「答えろ天女。お前の目的はなんだ。また俺たちに手をだそうものなら
今、ここで死んでもらう」
情報量があまりに多い今の状況についていけない。
そんな私をよそに上からふりかかる命令口調の言葉はどこまでも平坦だ。物騒なことを言われているのに今はイライラして駄目だ。頭にかっと血がのぼったのがわかる。
「目的って?!あるわけないでしょ!私は!気がついたら!ここに居たの!」
体を自由に動かせない不快さと、押さえつけられた箇所の痛みに半ばやけくそになりながら答える。
答えたのに何の反応もなし。なんなの、本当に。
本当に気づいたらここに居た。学校の課題をしていた途中だったのに少し目を閉じて伸びをしていたら知らない森のなか。突っ立っていると、後ろから首を掴まれ驚く暇も呆然とする暇もなく体を押さえつけられた。そして今の状況に至る。
強く掴まれた両腕の骨からギリギリと軋む音が聞こえ、痛みが増していくのが分かる。今にも血が止まりそうな腕をなんとか動かそうと体をよじるけどびくともしない。むしろ更に強く掴まれる。私の背中に跨がる男の顔をなんとか見ようとしても首根っこを押さえつけられてこっちもびくともしない。なんなのこれ、イライラする。
そのまま体を押さえつけられること早数分。
この状況からなんとか脱しなければと再度体にぐっと力を入れた瞬間、
フッと腕にかかっていた力が抜けた。自由を得て、そして支えを失った体はそのまま前のめりに倒れこんだ。ずっと掴まれていた腕は思うように動かず、手をつくことも出来ずに顎を打った。ゴッと音がして顎に鈍い痛みが広がる。口を閉じていて良かった。ぐわんぐわんと揺れる視界と顎を襲う痛みに涙目になりながら顎をさすっていると、腕を強く掴まれぐいっと乱暴に立たされた。
「ついてこい、はぐれたくなければさっさと歩け」
冷たく平坦な口調。と流石の急展開に一瞬呆然とした。当たり前だ。だけど、日が落ちた森で一人で行動する事ほど危険なことはない。私はここの土地勘もないからなおさら。これくらいは馬鹿でも分かる。そう、私はまだ死にたくない。
覚悟を決めたところで本当にさっさと行ってしまう男たちの後ろを慌てて着いていく。
後のことは後で考えれば良い。きっと大丈夫。
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セナ(プロフ) - Ry osdさん» ありがとうございます!とても嬉しいです!励みになります!今はスマホの方で書いているのでIDが違います。ややこしくてすみません。 (2020年3月29日 3時) (レス) id: 9a1a35c746 (このIDを非表示/違反報告)
Ry osd(プロフ) - ゆっくりでいいので楽しみにしてます。 (2020年3月29日 1時) (レス) id: d9cf167b43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:利世 x他1人 | 作成日時:2020年2月22日 14時