〈2〉病んでる海賊達の短編集【ワンピース】 (ページ16)

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・ページ16

『あ！ルッチさん！おはようございます！ブルーノさんから聞きましたか？南の島の珍しいワインが入荷したそうですよ！』

いつも笑顔で、それでいて彼の邪魔にならないように。

『っわぁ！ルッチさんってすごく力持ちなんですね！ガレーラの中で一番強いんじゃないですか？』

嫌味にならないくらいの褒め言葉を。

『ルッチさんって、素の自分を隠してたりしますか？……あ、いえ！深い意味では無いんですが、その、何だかミステリアスですし。それに少し、退屈そうに見えたので……ごめんなさい！忘れてください！』

たまにスパイスも混ぜて。

どう？ルッチさん。

今まで、こんなに趣味が合って、居心地が良くて、空気が読める女に会ったことある？

ルッチさん、やっぱり一夜だけの関係っていう女の人は沢山いたみたいね。

私はその1人にはなってあげない。
特別な存在になってみせる。

そんな風に接してきて、1ヶ月くらいが過ぎた。

彼から話しかけてくれることが増えた。
いつも無表情の彼の笑顔が時折見られるようになった。
食事にも誘われた。

順調だった、はずだった。

ある日、ガレーラカンパニーの職員が何者かに殺された。
理由は知らない。
死んだのは明るく爽やかな好青年で、私も仲が良かった人だ。
でも、誰が殺したのはわかる。
CP9の誰かだ。

身体を貫く銃痕のような跡。
体の途中で止まっていて貫通はしていない。それなのに弾が残っていない。
弾を取り除いた痕跡もない。

ワンピースの漫画を読んで無かったらわからなかっただろう。

これは“指銃”
強化された指を恐ろしい速さで突き出すことで、まるで銃で撃たれたかのような傷がつく。
銃とは違って音もない。心臓を貫けば一瞬で命が飛ぶ。

「大丈夫かっポー」

『…あ、ルッチさん』

ガレーラの食堂で温かいお茶だけもらって飲んでいたら、ルッチさんから声をかけられた。
いつもだったら笑顔で返すのに、今日はその元気がなかった。

『ごめんなさい…。ちょっと、落ち込んでて』

「そんなにあの男と仲が良かったっポー？」

『え？あ、いいえ！でも、いつも優しくしてくれてて…。私、家族がいないので、お兄ちゃんみたいな存在だったんです…。』

あぁ、この回答は30点だなぁと心の中でぼやく。

そう思っていると、彼が口を開いた。

「なんだ、家族愛のようなものだったか」

思わず顔を上げて彼を見た。

彼は安堵したかのように笑っていた。