〈2〉病んでる海賊達の短編集【ワンピース】 (ページ17)

今日:11 hit、昨日:33 hit、合計:321,870 hit

・ページ17

元から割と勘が良い方だった。

あの明るい好青年を殺したのはルッチさんだ。

そして、彼を殺した原因が私にあることも気づいてしまった。

確かに、彼はよく私に世話を焼いていた。
でも私はルッチさんが好きってことを伝えてたし、彼も私のことを応援してくれていた。

あぁ、でもそうか。確かに彼が殺される前の日は。
荷物持ちをしてくれるからって言われて、一緒にスーパーに行って、夕食をうちでご馳走したっけ。

嫉妬してくれて嬉しい、とはならなかった。

ルッチさんが怖くなった。

ワンピースを読んでいた時から、暗殺が職業だということは知っていた。知っていたけど、現実(リアル)じゃなかったから怖くは無かった。

でも今は現実(リアル)。
痛みも、叫び声も、流れる血も。
全てが現実(リアル)。

殺された人達にも一つ一つ人生があって、悲しむ人達がいる。
漫画を通してだと気付かなかったことに気付いた。

少しずつ、ルッチさんから離れていくことにした。

不自然にならないように。

むしろ、つまらない女だと思われるように。

そんな風に態度を改めて1週間が経った。

『ただい……ひっ！？』

仕事が終わり、アパートの鍵を開けて家に入る。
そして扉を閉めようとしたところで、第三者の身体が入り込み、そのまま壁に身体を押し付けられた。

本当に驚いた時は声が出ないんだということを知った。

『ル、ルッチさん…！？びっくりした…。し、心臓に悪いのでやめてください』

何も言わない。

力が緩まない。

頭の中で警報音が鳴り響く。
鳴り響くだけでどうにもできないけれど。

『っ、きゃあ！？』

そのまま抱えられて自室のベッドに落とされた。

前の世界にいた時、何度も夢に見たシチュエーション。今それが現実になっている。

なのに、どうして

こんなに怖い。

毛布をたぐりよせて、羽織る。
毛布をかぶっていると少しだけ安心するから。

ルッチさんは私の部屋を観察するようにぐるりと一周して口を開いた。

「酒のチョイスが良い。ワインの保管方法も完璧。良い女だな」

『っ声！何で』

「元々こういう口調だ。あの腹話術の時の声の方が良かったか？」

私が驚いたのはそこじゃない。

声を隠さなくなったことについて驚いたのだ。

声を隠さなくて良くなったということは、裏を返せば潜入調査していることをバレても良いということになる。

つまり

最悪の展開だ。