〈1〉病んでる海賊達の短編集【ワンピース】

ある遊女の話（ホーキンス） ページ29

夕暮れになると店の提灯に明かりが灯る。
この明かりがつくと、私達はお店に並ぶ。
外国の言葉で例えるなら、ショーウィンドウ。私達は商品だ。

きらびやかな着物に袖を通し、華やかな香りを身にまとう。
その笑顔は多くの男を虜にし、彼女達は訪れた男達に一晩の夢を与える。

一夜限りの夢物語。
お金さえ払えば、今日一日はその女は貴方のもの。その手練手管で貴方を満足させるだろう。彼女達はそう＿＿遊女だ。


ワノ国といえば誰しも一度は聞いたことがあると思う。完全鎖国国家で独自の文化が形成されている珍しい国。
遊郭、遊女もそのひとつ。
一晩の花を売る場所。

いや、文化と言っていいものなのかは少し疑問が残るかもしれない。遊郭で働くというのは存外厳しいものである。



遊郭で働く女は、ほとんどが借金で親に売られてきた口だ。皆、借金を返すまでこの遊郭という鳥籠に囚われている。嫌々働いているに過ぎない。

私は12歳の時にここに売られた。それから10年間遊女として頑張ってきた。安いお給料をやりくりしてお金を貯めた。そんな生活もあと少し。もう少しで私は借金を返し終わる。
やっと、自由になれる。

10年の間にそこそこの人気を得て花魁の地位まで上り詰めた。自分の価値が上がったことによって、タチの悪い客に買われることも少なくなっていた。

あと少し。心の中で自分を励ましながら店先に座る。
馴染みのお客さんでも来てくれれば楽なんだけどな。そんなことを考えながら通り道を見ていたその時だった。
　


金髪の長い髪の人と目が合った。

綺麗な金色。
ワノ国の人は黒髪が多いから珍しい。
彼女が花魁になったら人気が出そうだなと思っていると、その人はこちらに向かって歩いてきた。



「その女を買おう」

「へい！かしこまりました旦那！」


声を聞いて、その人物が男だったということに気づく。綺麗な人だったから女の人かと思った。
確かに近くで見ると背も高く、体格も良い。



「A！ご指名だ！自分の部屋に上がりな。いやぁ、旦那様もお目が高い！Aはこれでもこの遊郭の3番目に人気の花魁でしてね」


郭の楼主が嬉しそうに客に話しかける。
それもそうだろう。部屋持ちの花魁は下の遊女に比べると値段が高い。
一晩で万単位の金が動く。

座敷に上がろうと立ち上がった際、金髪の方とまた目が合ったので軽く会釈をして言った。



『よろしくお願い致します。旦那様。わっちはAといいます。以後よしなに』

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