【男主】赤髪の六年生の話【善法寺伊作】

命の価値観　留三郎side ページ47

“割り切っている”


自分じゃない他の誰かの命が消える瞬間を

なす術なく受け入れるのはたやすい事ではない



戦忍だったなら尚更な話。

忍として受けた仕事が暗殺や虐殺でありふれたものだったなら、命なんてものはとても軽い価値へと変わる


だからこそあいつは……Aは知ってるんだ




戦乱の中で生きる命があまりにも儚く脆く簡単に消えて、それを受け入れなきゃならない事を



“割り切っている”



戦場にいたからこそ、その言葉は重みを持っていた



誰よりも命を尊ぶ伊作

誰よりも死を間近にしていたA



よくよく考えてみれば、命の価値観が違う二人が対立するのは遅かれ早かれ起きていた事なのかもしれない。




ただ……




「そう、か…」



見てるこっちが痛々しく感じるくらい屈託のない笑顔を向けるAに俺は、かける言葉を失った



『ま、そういうわけよ。伊作くんの事は留三郎に任せるわ』



去る背中を見送りながら、俺は思った。





“割り切ってる”



(なぁ、A…お前本当は、)




戦の場数を踏んだ事による慣れなんかではなく

罪悪感に押しつぶされそうになった自分自身を守る為の物だったんだろ？



仕方のない事だと自分に言い聞かせ続けて無理やり納得させて生きてきたんじゃないのか？




(“割り切ってる”んじゃなくて、

“割り切らなきゃいけなかった” んだろ？)





でないと、心が壊れちまうもんな。

諸泉尊奈門→←否定する心

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す