衣筒孝太郎 ページ6
意を決したように、衣筒が口を開く
「竹谷八左ヱ門。今一度問うぞ？」
「？はい」
真剣な表情な衣筒先輩からは殺気は感じられない。
少し肩の力が抜けた竹谷の拘束が和らぐ
だが既に悲鳴を上げてる体は言う事を聞かず成す術なく未だされるがままその腕の中に身を置いた
「ここには“嘉黒の息子”はいないんだな？」
衣筒先輩の意図も読めないまま、竹谷は答える。
「はい。間違いありません
ここにいるのはただの忍術学園生徒…七人目の六年生である鷹尾A先輩です」
「…。そうか」
その言葉に、先輩は小さく笑う。
『…先輩っ俺は、』
「あまり動くんじゃない。傷に触る」
『ですが、』
少し体を捻ろうとしたのを先輩に止められる
「鷹尾。お前はもう、過去に囚われるな
全て終わったんだ。後はもう進むだけだ」
『…』
「竹谷だけじゃない。お前を慕う者達はきっとお前を守るために傷つく事を躊躇わない
お前がかつて同じ様に彼らを守ってきた様に…
だから、その体はお前1人のものじゃないんだよ
もっと大事にしなさい」
『…』
「後、久々知の件。ありがとう あいつを陰ながら支えててくれて」
そっと優しく頭を撫でられる。懐かしささえ感じる優しい手に込み上げるものがあった
……
「任務遂行。私の手を下すまでもなく嘉黒家は忍術学園によって殲滅
依頼主にはそう伝えとくよ」
「ありがとうございます」
少し他のみんなと離れて衣筒は竹谷を呼んだ。
「にしても、あの泣き虫小僧が立派になったもんだ」
「オレだってもう五年生です。もう泣きませんよ」
「“鷹尾の存在は必要不可欠”
あれは、お前自身の事なんじゃないのか？」
「……」
僅かに目を見開き、少しの沈黙が続く
そしてそっと、シキに抱きつかれながら鉢屋と話すAの姿を盗み見る竹谷
「あんたは本当に手の掛かる…」
『悪かったよ』
《A、あんまり動くとまた倒れちゃうよ》
「…。そうです。オレにとっても
とても大事な人なんです
だからもう、これ以上苦しんでほしくない」
囁く様に出てきた本音の意味をきっと竹谷は理解している
そして、それを叶えるつもりはないのだと衣筒は不意に悟った
“本当にそれでいいのか？” なんて、
あまり余計なヤジを挟むのはよそうとその言葉はそっと心の奥にしまったのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 192人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
伊綱(プロフ) - みぢゅさん» 温かいコメント痛み入ります！いつでもお越し下さい！！ (12月16日 21時) (
レス) id: 4fcd5fb6be (このIDを非表示/違反報告)
みぢゅ(プロフ) - 昨日この作品を見つけて時間も忘れて最後まで読ませて頂きました!! すっごく面白くて、言葉選びも綺麗で、本当に感動しました！また何度でも愛読させていただきます…！ (12月16日 9時) (レス) @page40 id: 26ff2501e8 (このIDを非表示/違反報告)
伊綱(プロフ) - 猫毬かなめさん» ありがとうございます。何度でもお越しください。彼らはあなたを歓迎してくれると思います！ (8月22日 9時) (レス) id: 4fcd5fb6be (このIDを非表示/違反報告)
伊綱(プロフ) - ハクさん» コメントありがとうございます！この作品はずっと残り続けるのでこれからも愛読していただけたら嬉しいです (8月22日 9時) (レス) id: 4fcd5fb6be (このIDを非表示/違反報告)
猫毬かなめ(プロフ) - 完結おめでとうございます！更新がある毎に初めから読み返したくなる、とてもお気に入りの作品でした。この六年生達の絡みが紡がれなくなるのは寂しいですが、これからまた何度も読み返し会いに来たいと思います。お疲れ様でした。ありがとうございました。 (8月22日 3時) (レス) @page40 id: 7e8e70364c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：伊綱 | 作成日時：2021年8月11日 22時
