帰還とサプライズ 悟side ページ32
笑顔で旅立った最愛の人を見送ってもう二年とちょっと
予定だと一年前には戻るって話だったのに
彼女は今どこで何をしているのだろうか。
会いたい…
(Aさーん、大幅な遅刻ですよー)
「五条。お前今から時間あるか?」
「んー?見たまんまだよ」
「オッケー暇だな」
「あ、そう判断しちゃう感じね」
「来て」
突然現れた硝子に突然連行され、やって来たのはかつて僕らが勉強していた教室
「硝子ー、僕今気分沈んでるんだけど」
「いいから」
「なになに?いくら硝子でも僕を驚かせないよ?
そんじょそこらのサプライズじゃびっくりしないから」
「そのセリフは中のやつを見てから言いな」
そう言って教室に向かって勢いよく背中を押され
中に入ると、今一番聞きたい声が聞こえた
『やっほ〜悟。元気だった?』
「…え?、は?」
『さびしんぼな悟の為にこれでも早めに切り上げて帰ってきたよ。あ、ちゃんとお土産持ってきたからね
ちょっと遅れたのは許してね』
待って。待って待って、全然話がわからない
目の前のAまでは理解できたけど、そこじゃない
「な、んで」
『あー。うん
ほら私教師なんてやった事ないし不安だったってのもあるんだけどね。
悟喜ぶかなーっと思って
ちょい無茶しちゃった』
「…っ」
脳が情報を取り入れ過ぎてまだプチパニクッだ
だって、だってさ……ありえないじゃん
『私言ったよね
“悟の喜ぶお土産”って』
どうよ?これが私の本気だよ。なんて誇らしげに胸を張ってるAを撫で回したかったが
今はそんな余裕がなかった。
もう一度目隠し外して六眼で見る
(…あぁ、間違いない。本物だ)
『ちょっと、黙ってないでなんか声かけてやりなよ
悟感極まって泣きそうじゃん』
Aの隣で今の今まで黙ってた奴が口を開く
少しぎこちない“久しぶり”
でも、続けて聞こえた俺の名を呼ぶその声に
色んな想いが溢れてきて
言いたい事は山ほどあったのに
漏れそうになる感情が邪魔をする
唯一口に出せたのは、あいつの名前だけだった。
「__…傑ッ」
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作者名:伊綱 | 作成日時:2023年10月2日 4時