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嘘なんかじゃない ページ26

(まずい…完全にさぎりさん気づいてた)


さぎりさんが置いて行ったカステラを見つめながら一人悶々と思考を巡らせていた。



『…っもう、』



悟の事を思い出す度に先程の一件を思い出して顔が赤くなる。


そもそも生まれてこの方“彼氏”という概念すらなかった故に悟の行動は私をえらく翻弄させた




(悔しい…っ)


(そもそも、なんで悟あんな余裕そうだったわけ!?)



私なんてキス一つであんなに心乱れたのに…



元来どちらかと言えば“愛される”よりも“愛したい”派だった私にとってなす術さえ持たせてもらえず一方的にしてやられた事が何よりの屈辱だった。



せめて一回でもやり返せていれば。なんて今になって思う



『…でも、少しわかった』




人が人を愛したいと思う心情を、この時やっと理解した


名を呼ばれただけでも訪れる幸福感


その上言葉にしてそれを口にされれば余計に離れられなくなってしまう。





『…すき』




試しに小さく、改めて声に出してみる。

一度目はあやふやな意識化の中だったから、脳が正常に戻った今、もう一度口に出してみた


しっくりと浸透するセリフを噛み締める様に何度か呟いてみる




『好き。』


『私も、悟が好き』


『悟。大好き』




(うん、しっくりくる。この言葉は嘘じゃないんだ)



確かに存在する“好き”という感情

いやむしろ、もっと上の…


そう思って、別の言葉を探してみた時 不意に出たのはたった一言











『 愛してる 』










「あらあら、随分といじらしく可愛らしい独り言だこと」




突然降って来た控えめな声に体がびくつく。

振り返ると、ふふっと微笑みながら見つめてるさぎりさん



『い、いつから!?』

「あなたが“好き。”と言ったあたりかしらね


ふふ、悟をこんなにできるなんてきっとあなたくらい」




そう言って背中を押されながら一歩前に出た悟は




「…っ」




先程の余裕面はどこへやら


顔を真っ赤にして無言でこちらを見つめていた

五条家当主→←五条家の氷花



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作者名:伊綱 | 作成日時:2023年10月2日 4時

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