秘め事 七海side ページ16
ああ、言ってしまった。
墓場まで持っていくつもりだったのに
「…七海、お前。そうだったのか」
「驚いてます。私も」
一つ上の先輩。
問題児二人、ただし最強。
なんてふざけたレッテルをちらつかせて意気揚々と日々を我が物顔で進んでいく彼らを、少し後ろで見守っていた人
夏油さんの双子の姉
一つ上の先輩らに対して初めて良い印象を持った人はあの人だったのを覚えてる
『五条にムカついたらいつでも言ってよ。
無条件で味方してあげるから』
何と頼もしい言葉を有言実行し
あの唯我独尊先輩を呪力なしでコテンパンにしてくれたのは実に爽快な思い出だ。
私よりも一回り以上も小さい背中の筈なのに
広く大きく見えて
「はい」
一目惚れだった。
何にも囚われない、自由を表現したようなその笑顔
一生忘れることはない。
「ふーん、Aは男運がないと夏油は言っていたが
それは間違いなのかもしれないな」
「どうですかね。
私も彼女を“泣かせる男”に部類されるかもしれませんよ」
「謙遜か?弱気じゃん」
「どうとでも言って下さい」
家入さんは何かを察したのか、それ以上の言葉は紡がなかった。
(私があの人にしてやれる事なんて…何もない)
半分に減っていた残りのビールを勢いよく飲み干す
復活した伊地知くんに「そんな飲み方は体に悪いですッ」と言われたが構わず飲み続けた
今日はらしくもなくペラペラと余計な事を喋ってしまった
きっと、いつも以上に酒を煽ったせいだ
そうだ。きっとそうに違いない
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作者名:伊綱 | 作成日時:2023年10月2日 4時