過去編 「俺」が生まれた日5 ページ31
「秀一郎何しとるんだ早く来いッ」
「A連れて逃げろッ雅之助」
『…い、嫌だ。俺も…俺も戦う、だからっ』
「生き延びて、幸せになるんだ
お前にだって、その権利はある」
「……くそ、」
『…大木さんッ!?』
「許せ、秀一郎の意思だッ」
『…っ』
大木さんに押さえつけられながら気配を断つ
敵の足音が近づいて来るのが分かった。パタンと閉じられた床板に敵が気づく気配はなく俺達はそのまま通路を進む
外に出た時、外はまだ暗かった
振り返ると、遠くの山に煙が立ち僅かに炎が見えた
『…っ』
(どうして…どうして、)
変わり果てた山を背に、俺は大木さんと共に夜の道を歩く。
幼い頃から泣く事さえ許されなかった故に、涙はそう簡単には出てきてくれなかった。でも、しっかり根付いたこの胸の痛みは昨日よりも痛みを増した気がする
『…』
ふと、分からなくなった。2人の様な善良な人が死んでいるのに、自分様な人間がのうのうと生きていていいのか?
……いいわけ、ない。
「……、何しとるんだバカタレ!!」
『…っ』
パシっと己に突き刺そうと苦無を持つ手を掴まれる
自暴自棄になり始めた俺はその腕を振り解こうと暴れる
『離してよッダメだ…やっぱできない、Aを差し置いて俺だけが生きるなんて…そんな、そんな事できるわけない』
俺の心の叫びを聞くだけ聞き終えた大木さんは、勢いよく俺を殴り飛ばす。受け身を取らない体はそのまま地面に沈む
「よく聞けクソガキッお前の考えてる事なんて秀一郎ももう1人のAも望んじゃいないッ
第一ガキがんな小難しい事ずるずる考えるな!!」
『あんたに何がわかるッ、俺の事情も知りもしないで気安くガキ扱いするな!!』
「ガキはガキだが、お前は段違いのクソガキじゃ!!
お前の生い立ちなんぞ秀一郎から聞いてる、その歳でどれだけの人間手にかけたかもな!!だが、それは過去として流せッ進むべきは明日の未来だ」
『…っ流せってあんた、自分が何言ってんのか分かってるのか?秀一郎さんは古い友人だったんだろ?
その親友の最後の遺産が、目の前の俺のせいで死んだ
あんたは俺が憎くないか?俺がいなければ秀一郎さんに加勢できた。救えた命だったかもしれない
本当は、殺したいだろ?ねぇ、どうなんだよ』
「やかましいっっっ!!!!」
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伊綱(プロフ) - 紫さん» ありがとうございますありがとうございます!!めちゃくちゃ嬉しいです頑張りますっっ (2020年12月23日 12時) (レス) id: f89eb70165 (このIDを非表示/違反報告)
紫 - この作品むっちゃ好きです。更新楽しみにしてます (2020年12月22日 3時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
伊綱(プロフ) - 葵さん» ありがとうございます!とても嬉しいですっっ (2020年10月28日 15時) (レス) id: f89eb70165 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - 面白かったです!更新楽しみにしてます! (2020年10月28日 14時) (レス) id: 1d63efc7c2 (このIDを非表示/違反報告)
伊綱(プロフ) - 猫築かなめさん» ありがとうございます!!なるべく更新できるよう頑張ります (2020年10月23日 11時) (レス) id: f89eb70165 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:伊綱 | 作成日時:2020年7月25日 13時