七人目の六年生の話参

夢現　竹谷side ページ16

“竹谷、今夜の事は…忘れるんだ。いいね”


どうしてですか？

どうして、貴方はそんなにも悲しそうな顔をされるのですか？


“ごめんね。怖い思いをさせて”


違う。貴方はオレを守ろうとしただけだ

なのにどうして…どうして謝るのですか？



“竹谷、みんなを頼んだよ”


待って…待ってください！！何処に行くんですか。


……先輩、先輩！！！




「A、先輩…」

「八？！目が覚めたんだね。僕がわかるかい？」

「雷、ぞぅ？」

「やっと起きたか寝坊助。もう夜だぞ」

「八の分はおばちゃんに頼んで卵雑炊にしてもらったよ。食べられる？」

「…三郎、勘右衛門」


目を覚ました時、まず目に入ったのは保健室の天井と雷蔵の顔だった。その近くには仏頂面の三郎、お盆を手にうどん髪を揺らす勘右衛門

勘右衛門からお盆を受け取って少し冷めた雑炊を口に運ぶ。

途中切れた口の端に当たって少し痛かったが、空腹の方が勝っていたのでそのまま箸を進めた


「凄いうなされてたけど大丈夫？悪い夢でも見た？」

「それが…よく覚えてなくて」


夢の断片は思い出せるが、とても嫌な感じがして思い出すのも憚られた

唯一気になるのは夢の中の委員長…




「そういえば、委員長は！！？」


今、どこに＿＿。

その言葉は、新たな来客者によって阻まれた



「…」

「…兵助？」

「…っ」


勢いよく襖を開け、中を見渡すのはやけに顔色の悪い兵助だった。

兵助は、オレと目が合った瞬間顔を歪めてその場に崩れ落ちた


「すまない、八左ヱ門……すまないッ」


突然の出来事に誰もが驚き、そして兵助に寄る


「どうしたんだよ兵助、そんな汚れて…それにどうして謝るんだ。一体何があったんだよ」

「……ぉ、…ぃを、」

「ん？」

「俺じゃ…俺一人の力じゃ

A先輩を…止められなかった」



嗚咽混じりに囁かれた兵助の言葉に全員が固まる。





“何かが起きている”





そんな不穏な気配を宿して

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