和の地方花鳥風月短編集 (ページ4)

今日:8 hit、昨日:0 hit、合計:11,641 hit

名も無き少女の名も無き旅路:1 ページ4

15歳(大体)の夏。
私は旅に出た。

外に出れば石を投げられ、出なければ飢えるこんな生活に耐えられなくて。

相棒のラルトス(♂)を連れて、誰も起きていない深夜に着の身着のまま抜け出した。

もっとも、着の身着のままといっても、まず服以外は拾った小刀(血つき)くらいしか持ってないんだけど。

少し行くと、川にぶち当たった。

泳いで進まないとこれ以上逃げられないのは分かっているが、泳げる体力もなければ泳ぎ方も知らない。

｢………………(お腹すいた)｣

まともに言葉を教えてもらったのが親が死ぬ前……2～3歳だったので、なんとか聞いた言葉の意味を理解したり日本語でものを考えたり出来るものの、喋れない。喉が声の出し方を知らないのだ。
にしてもこれはまずい。
ラルトスも私も餓死寸前。
さすがにここでのたれ死ぬのは嫌だ。
どうしたものか……

｢ミジュ？｣

不意に、聞き覚えのある声が聞こえた。

それは、もう10年以上前、まだお母さんがいたときに聞いた声だ。

ばっと顔をあげると、こちらを不思議そうに見つめる顔と目があった。
｢…………!?｣

｢ミジュ～？｣

そう、ミジュマルだった。

聞き覚えがあったのは、13年前、親の亡くなる1年前に、私達がイッシュに引っ越していたからだ。
親が亡くなってから、私はこの地方にきたのだ。
いわゆる、たらい回しで。
……そもそも私はなんで、物心ついてない頃の記憶があるんだろう。

っと、今はそんな事考え込んでる場合じゃなかった。

ミジュマルをまじまじと見てみると、手にきのみを持っていた。ということは、この辺に生えているのだろうか。
それを聞きたかったが、もちろん言葉なんて出てこなかった。

すると、ラルトスの頭の結晶がふっと光った。
サイコパワーを使うときのモーションだ。
どうやらラルトスはテレパシーで私の言いたい事を感じ取ってくれたようで、ミジュマルに話し出した。
ポケモンはいつ、言語能力を手に入れるんだろ。

そんな事を考えていると、ミジュマルに話が通じたらしく、ミジュマルはラルトスの手を引いて走り出した。

多分きのみの生えている場所を教えてくれるのだろう。

私はミジュマルについていく形で走り出した。

名も無き少女の名も無き旅路が独立した小説になりました！
何話で飽きるかわかりませんが宜しくお願いします！
http://uranai.nosv.org/u.php/novel/Mizukikakohen/