和の地方花鳥風月短編集 (ページ2)

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1.弱々しい僕と勇敢だと思うあの人。ページ2

僕と色名さんが会ったのは僕が18、色名さんが22歳の時だった。

鞍馬町にマジックショーをしに僕は右京林に居た。

小春町から行くには僕の足じゃあ朝7時に家を出なければいけない。

だから5時に起きて……ってしても流石僕。アンコール用の器具を忘れてどたばたして。

結局10分遅れて家を出た。小さい頃から一緒に居たメタモンを連れて。

慌ただしく家を出て焦りながら鞍馬町に向かってた僕はその右京林で人とぶつかってしまった。

「っす、すみません！大丈夫ですか！？」

「うるさい……大丈夫だから」

そこで少し違和感に気づく。

「あっ、僕の財布っ……か、返してください？」

「(疑問系……？)嫌だ。……このためにわざとぶつかったのに何で返さなきゃいけないの」

わざと……？
その人はメタモン君を見て目が変わった気がする。

「……そーだ、そのポケモンと交換するならいいよ」

「嫌です！」

「……交換しないなら返さない」

「返してください！」

「交換？」

「しません！」

「じゃあ返さない」

「返してください！」

「交換？」

「しません！」

やり取りが少し続いてその女の人は帰ろうとした。

「ゲンガー、どろぼう」

「へっ？」

「え？」

「うん？」

いや貴方が疑問に思っちゃダメでしょ。

「ちょっと！私の財布返」

「さない。はい、これ」

「……ありがとうございます！」

この人勇敢だな……それが色名さんへの第一印象。
ヒステリックに嘆く女の人を顔色一つ変えずしかも死んだ目で宥めている。

まるで闇の世界のボスみたいな格好をしているその人と女の人の会話をボーっと見ていたらその人に声をかけられた。

「貴方、うちの町にマジックみせにくる人だよね？早くいかないと時間が」

「わあああああああああああああ！！遅刻だあああああああ！！」

行こうメタモン！と走りだそうとしたらいきなり手を捕まれて落ち葉で滑って転けた。

「ついでに連れてって」

「迷った」

その人は困った様な笑顔で僕を見下ろす。

＿＿

「えええええええええええ！？」

「僕は色名って言うんだけど……貴方は？」

「時雨といいます！！」

「そう。よろしくね」

「はい！」

その日のショーは大成功した。

＿＿

「……っていうのありましたよね！」

「えー？」

「ありましたよね！って僕のプリン！」

「ドーナツ食べた仕返し」

「ぬ……」