ななつ、その温もりは。 ページ7
「全く貴方というひとは………一体何杯呑んだんですか。」
『あは………わかんないやあ。ごめんねえとーるくん。』
「そのうちアルコール中毒になっても知りませんよ。妹さんにいいつけますからね。」
『それはかんべんだなあ……。』
ぐでん、と酔っ払いのわたしを甲斐甲斐しく介抱してくれるのは、大くんと同時期に知り合った安室透くん___コードネーム、バーボン。
彼と大くんはどうやら馬が合わないみたいなのだけれど、わたしと透くんはわりかし気があった。というか、彼の世話焼きの性格がどうにもわたしを放っておけなかったらしい。
怪我をすればやれ貴方には危機察知能力がない、風邪をひけば自己管理がなってないと怒ってくれたのか心底呆れられたのかは定かではないけれど、彼はわたしが倒れてしまう現場に何故か遭遇してしまうのだ。
あんまりにも彼に出会うから、出待ちでもしてたのかと聞いたことがある。しかし彼曰く"誰がそんな面倒なことするんですか、任務の資料読んだ方がよっぽど効率的です"とばさりと斬り棄てた。そう言いつつもわたしを介抱してくれているのだから、彼は物好きな人間である。
………まあ平たくいうと、彼は妙にわたしに甘い、というのが正しそうなのだけれども。
ほら、帰りますよと彼の手がわたしの手を引く。その手に少しだけ抗うように引っ張ると、透くんは眉をしかめた。
「僕、嫉妬したライとなんて会いたくないんでとっとと貴方を送りたいんですけど。」
『………だいじょーぶ、だよ。』
「何がですか。……ほら、ワガママよして帰りますよ。どーせライが心配して、貴方の帰りを待ってますよ。」
『……そう……だね。だいくんはやさしいから。』
きゅ、と噛んだ唇に無理矢理笑みを乗っけて笑った。きっと本当に帰ってきて欲しいのはわたしではないと思うけれど、わたしはずるいからその位置に座るのだ。
「颯季さん、ライと喧嘩でもしたんですか?」
『んん……どうして……?』
「気づいてないんですか。貴方、随分と酷い顔ですよ。」
『………わたしは、いつもどおりだよ。』
ほらね、と微笑むと彼は訝しげに此方を見る。その視線にゆっくりと首をかしげると、彼の指先が瞼にひたりと触れた。
(なら何故、泣いてるんですか)
(彼の真っ直ぐな言葉はいつも)
(熱い指先とともにわたしのこころを抉るのだ)
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奏音(プロフ) - 続き気になります!次の章?も楽しみにしてます☆ (2017年6月28日 23時) (レス) id: 1c9df138c6 (このIDを非表示/違反報告)
京(プロフ) - Writerさん» いえいえとんでもない!! 好きな小説の作者様に見て頂けているだけでもう感無量です…!こちらこそいつも応援しています! (2017年6月28日 15時) (レス) id: e3933b8944 (このIDを非表示/違反報告)
Writer(プロフ) - 益夷 佐々羅さん» こんにちは、コメントありがとうございます(*´ω`*)申し訳ありませんが現在次作品のほうを執筆中ですので、今しばらくお待ちくださいませ。 (2017年6月28日 10時) (レス) id: 8bb1061e6e (このIDを非表示/違反報告)
Writer(プロフ) - まいちんさん» こんにちは、コメントありがとうございます(*´ω`*)申し訳ありませんが現在次作品のほうを執筆中ですので、今しばらくお待ちくださいませ。 (2017年6月28日 10時) (レス) id: 8bb1061e6e (このIDを非表示/違反報告)
Writer(プロフ) - ゆきなさん» こんにちは、コメントありがとうございます(*´ω`*)申し訳ありませんが現在次作品のほうを執筆中ですので、今しばらくお待ちくださいませ。 (2017年6月28日 10時) (レス) id: 8bb1061e6e (このIDを非表示/違反報告)
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