はたち あまりよっつ、疑惑の解明は。 ページ24
「………お久しぶりです。」
『…………ああ、やあ………とーるくん、かな。』
「!………ええ。」
かつ、と響いた音にびくりと身を震わせると降ってくる声がひとつ。内出血で膨れ上がった瞼を開ける力もなく、聞こえた声を頼りに声を絞り出す。対して返された懐かしい声は泣きそうな声で、然してそれを感じさせないように抑えた声で。
床に転がった無様な姿では申し訳ないなと起き上がろうとした手はかしゃりと鎖に阻まれ、またもやべしゃりと床に伏した。痛みはもう感じない。少し前から感じなくなっていた。幸いなことに精神と肉体を切り離す、みたいな
「っ、颯季さん!!動かないでください!今行きますから!!!」
『………とーる、くん?』
慌てて駆け寄ったらしい透くんはがしゃんと鎖の鍵を外したらしい。大きい音にびくりびくりと逐一反応してしまうわたしに眉を寄せ、そっと近寄ってわたしのからだを持ち上げた彼は耳元で囁いた。
「………貴方を、解放しにきました。」
『……かい、ほう……。』
「ええ。………ジン達も待ってます。さあ、外へ行きましょう。」
『…………そ、っか。』
ぐたり、と力が抜けた躰は一向にいうことを聞く気配はなく。透くんの熱い手が腕に触れていることだけがわかる。
ああ、助かったのか。___助けに、来てくれたのか。こんなわたしを。
薄れ行く意識のなかで呟いた"ありがとう"は果たして彼に届いたのだろうか。ぐるぐるぐるぐる、意識も思考もつるつると滑っていくようで、頭の端から溢れていくようで。
『…………あ、りがと………。』
ぽたり、涙がひとつ。ふたつ。頬の上を流れていった気がした。
(……………本当に、あなたというひとは莫迦ですね)
(こんなに………こんなに酷いことをされてるのに、何で笑えるんですか)
(ごめん、ね………)
(今謝罪は受け入れません。あなたがちゃんと元気になったら、許します)
(………てきびしい、なあ)
(消える意識のなかで)
(うっすらと開いた瞳に映ったのは)
(今にも泣きそうな顔でいるのに)
(無理にそれを圧し殺すようにして優しく声をかけてくれた)
(蒼くきらきら光る、彼の瞳だった)
はたち あまりいつつ、噛み締めたのは。→←はたち あまりみっつ。(残酷表現注意)
873人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
奏音(プロフ) - 続き気になります!次の章?も楽しみにしてます☆ (2017年6月28日 23時) (レス) id: 1c9df138c6 (このIDを非表示/違反報告)
京(プロフ) - Writerさん» いえいえとんでもない!! 好きな小説の作者様に見て頂けているだけでもう感無量です…!こちらこそいつも応援しています! (2017年6月28日 15時) (レス) id: e3933b8944 (このIDを非表示/違反報告)
Writer(プロフ) - 益夷 佐々羅さん» こんにちは、コメントありがとうございます(*´ω`*)申し訳ありませんが現在次作品のほうを執筆中ですので、今しばらくお待ちくださいませ。 (2017年6月28日 10時) (レス) id: 8bb1061e6e (このIDを非表示/違反報告)
Writer(プロフ) - まいちんさん» こんにちは、コメントありがとうございます(*´ω`*)申し訳ありませんが現在次作品のほうを執筆中ですので、今しばらくお待ちくださいませ。 (2017年6月28日 10時) (レス) id: 8bb1061e6e (このIDを非表示/違反報告)
Writer(プロフ) - ゆきなさん» こんにちは、コメントありがとうございます(*´ω`*)申し訳ありませんが現在次作品のほうを執筆中ですので、今しばらくお待ちくださいませ。 (2017年6月28日 10時) (レス) id: 8bb1061e6e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ