【49】 ページ3
「個性的な字だよね」
「体力切れでへとへとになりながら言う言葉がそれかよ」
肩で息をする。
浅く吸って吐いてを繰り返す呼吸が心臓を締め付けるように痛んだ。
手紙の枚数は二枚にも達していないのに、既に片手で数えられない程度には場地くんに体を貸していた。
元々長く持たないことはわかっている。
承知の上で体を貸す選択をした私に文句を言う権利はないとは思うのだが、如何せん自分の体力のなさが恨めしい。
そもそも、体力の問題とは少し勝手が違うのかもしれない。
時折その表情にじんわりと申し訳なさげに浮かぶ表情にゆるく笑い返すことしかできなかった。
「休憩するか？」
「そ…うだね。夕飯の準備もしなきゃだし」
「今日おやじさんは？」
「仕事。今チビ達が何してるか見てきてくれる？」
「仕方ねぇな」
「頼んだよ」
午前中から行われていた作戦会議、もとい手紙を書く会は、既に時計の針が17時を指す時間まで続いている。
弟たちから着想を得て、場地くんが納得するいい便箋を購入して。
準備はきっちりしっかり行えているが、手紙の主役はメッセージでしかない。
こればっかりは横着することは出来ないし、私も場地くんも頑張るしかないのだ。
弟たちを軽く確認してくれたらしい場地くんがにゅっと現れる。
「腹減ったってさ」と投げられた言葉にうなずいて立ち上がった。
少し休憩できたのは大きい。もう動悸もしないし、息も上がっていない。
「無理だと思ったらいつでも言えよ」
「バカ、言わないよ。突然手紙の字がきれいになったらそれはしっかりゴーストライターじゃん」
「オレの字が汚ぇってか！？」
そうは言ってないじゃん。
一瞬凄んでみせた場地くんの顔も、今はもう見慣れたものでしかない。
はいはい、と笑って流せば、毒気を抜かれたように場地くんも方眉を下げて笑った。
「今日は徹夜かな〜」
「明日学校だろ」
「いつも見てるんだから知ってるでしょ。学校で私が使うエネルギーゼロだから」
友達作れよ。場地くんがいるじゃん。
そんな軽口の応酬が楽しかった。
自分を友達、と称された場地くんは一瞬動きを止めて、それからくすぐったそうに目を伏せる。
「オマエもダチだな、確かに」
「幽霊になってからできた？」
「ウルセェ」
奇妙な縁で繋がれた私たち。
その終わりは、もうすぐそこまで見えていた。
けれど、でも。
私は、もう少し。
「そんなこと関係ねぇだろ。ダチによ」
君と一緒に、生きてみたいよ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 74人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「東京リベンジャーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
よぞら(プロフ) - 本当に素敵な作品をありがとうございました。もう最後の2人のデートで涙が止まらなかったですし、触れられない…体温もわからない…って切なすぎてずっと泣いてました(泣)本当に大好きです。ありがとうございます!! (2021年10月14日 1時) (
レス) @page31 id: 1a17489b7d (このIDを非表示/違反報告)
仁日 - 完結前なのにもう泣いた。文章能力高過ぎです。ゴイザラス。どうしようド性癖過ぎて完結したら暫くのたうち回る未来しか見えない。大好きです。愛してます。 (2021年10月12日 8時) (レス) @page15 id: 9efffd34d8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：晴海 | 作成日時：2021年10月7日 21時
