第一話 残酷 ページ4
昨晩降った雪は辺り一面を銀世界にして、未だに降っている雪は空気を冷たくして口から出る息を白く染め上げる。そんな冬は特に肌寒い雲取山にその家族は住んでいた。
?「炭治郎、顔が真っ黒じゃないの。こっちにおいで」
そう言いながらその家族、竈門家の長男である炭治郎に肌に着いてしまった炭を布で落としていくのは母親の葵枝。父は既に亡くなっており、女手一つでこの家族を育ててきた。そんな彼女は炭治郎が山を降りることを危惧していたが、心優しい長男の思いを聞いて降りることを許した。
?「おや、山を降りるのかい?僕も一緒に行ったほうがいいのかな」
そう言いながら自分の身長より小さい玄関から出てきたのは数年前からこの家族にお世話になっている鷹筆縁。人並み外れた身長で上から炭治郎のことを見つめる。その左目はいつも閉じられて瞳の色は誰も知らない。
炭治郎「あ、兄ちゃん!うーん、じゃぁお願いしようかな?」
人懐っこい笑みを浮かべながら頼む炭治郎は縁から見て可愛い以外何物でもなかった。そこに他の兄弟達もやってくる。次男の竹雄、三男の茂、次女の花子。
どうやら三人の会話を聞いていたらしく、自分たちも着いて行きたいと炭治郎に詰め寄る茂と花子。2人とも目を輝かせて行きたいと訴えるが葵枝は容赦なく否定する。
葵枝「だめよ。炭治郎や縁のように早く歩けないでしょう。今日は荷車を引いて行かないから乗せてもらって休んだりも出来ないのよ」
炭治郎「竹雄、できる範囲で構わないから少し木を切っといてくれ」
竹雄「そりゃあ、やるけどさぁ。一緒にやると思ってたのにさぁ」
縁「ありがとね。帰ったら一緒にやってあげるからね」
なんだかんだ言っていたが炭治郎と縁を見送る家族。手を振り返して前を見ると前から誰かが歩いてきた。歩いてきたのは長女の禰豆子と背負われて寝ている六太。
禰豆子「お兄ちゃん達」
炭治郎「禰豆子、六太を寝かしつけてたんだ」
禰豆子「うん。お父さんが死んじゃって寂しいよね。みんなお兄ちゃん達にくっついて回るようになった」
六太を撫でる炭治郎と禰豆子を撫でる縁。どこから見ても仲のいい兄弟。縁もこの家族といると本当の家族になれたような気分になって心が温まるような感覚になる。
禰豆子「行ってらっしゃい」
見送られて山を降りていく二人はたわいのない会話をしながら進んでいく。やがて目的の町に着くと、町に入る直前に縁は何を思ったのか空を見上げた。
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作者名:神夜の羽織 | 作成日時:2020年8月9日 9時