STAGE～私は君を見つけます～ (ページ15)

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thank as LIVE～感情を心の中で閉まって～ページ15

「そうか？じゃあ、行こうぜカイ！」
『そうだな。でも９時までじゃお腹空くだろうから、お前の分も少し買ってきてやる』
「え、いいの…？ありがとう。それじゃあお願いします！」
『なにか嫌いなものはあるか？』
「私、甘党だから辛いものはちょっと…」
『わかった。甘い物買ってきてやる』
そう文字を打って見せた後に、すぐにスマホを閉じて、カイは去って行った。
「あ、ありがとう！お願いします！」
そう、カイに向かって言った後、すぐさまスカブルに向き直った。
そのころには、発声練習もそれぞれの練習も終わっていて、これからみんなで逢わせようとしているところだった。
「じゃあ、新曲のBメ……やっぱり、『FANTASY in COURAGA』にしようかしら」
「その方がいいな」
新曲のBメロ・・・？新曲があるのだろうか。だが、本当にあるのなら、自分も知らない方がいいと思い、変更してくれたことに感謝しながら、ひそかに『FANTASY in COURAGA』に曲変したことに喜んだ。
まだ、ヨシがボーカルだった時の曲だ。これがヨシの最初で最後の歌声だった。
「じゃあ、再カバーということで、練習始めるよ～！」
そうヨシが言うと、皆同時に演奏を始める。
それは、私が初めてCDを買ったあの曲と全く同じく、何一つかわらない。
それぞれの思いもなにもかもが。
ライは、その演奏の中で大きな声で歌い始めた。
『この風を割いて先に進めあの光の見える向こうまで』
ユイは、その歌声を聴きながら、１人静かにほほ笑んだ。
昔からのスカブルファンの１人として。
「ここで聞けるなんて、思わなかった」
ユイはそう１人でつぶやくと、零れ落ちそうな涙を必死に吹いた。
あれ以来、ヨシ先輩の歌声は聞けてはいないし、これからも聞けないだろう。
だから変わりに、ライがいるのだろう。
そう思っているうちに、ライの歌声が徐々に、自分の脳内に残っているヨシの歌声に変わっていく。
「ヨシさん…」
ふと、ヨシさんの演奏姿を見てみる。すると、ヨシはライを見ながら、微笑んでいた。
普通は、悔しいであろう感情を心の中で閉まって、ライに微笑みかけている。
なんだか楽しそうであったけれど、やはり悲しそうでもあった。
じっとスカブルを眺めていると、ふいに足音が聞こえ始める。
『ただいま、ユイ』
「おかえりなさい」
ユイは、スカブルから目を話し、カイに向き直ってそう笑顔で言った。
『どう？スカブルの生演奏は』
「感動的だよ。ライブとかはお金無くて行ったことなかったから…」