◯日頃の感謝を ページ10
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なんか今日の阿部、具合悪そう。
そう思ったのは、ダンスレッスンギリギリにやってきた阿部の姿を見た時からだ。
多分熱はなさそうだけどマスクつけて踊るってことはそういうことだと思う。
それなりに今日のレッスンの内容はハードめだし、休みを多く取れるようにしたい。
こっそりと照くんに伝えれば、「わかった。ありがとう」と頭を撫でられた。
いざダンスレッスンが始まれば、ヒーヒーいうメンバー。
『休憩とりたいです！』
先生「5分だけだぞー」
よっしゃ、最高。
なんて思いながら一口チョコをほうばる。
阿部の体が持てば良いんだけど。
なんとか、阿部の体は持ち堪えた。
だけどあのまま返したらどうなるんだろ。
阿部のお母さんに連絡しとこ。
買い物だけして、家には上がらず、エントランスで阿部のお母さんにバトンタッチ。
これが一番いい策なのでは？うん。そうだわ。そうしよ。
マネさんにお願いして、私と阿部を最後におろしてもらうことにした。
他メンバーがバイバーイと降りていていく姿を見送ること8回。
車の中でも阿部のお母さんとは連絡を取り合っていて、何を買ったのかや阿部の様子を送る。
マネ「ついたぞ」
阿「ありがとうございます」
立ち上がった時に少しだけ動きが低下した彼。
『荷物貸して。エントランスまで一緒に行く』
阿「...ありがと」
今は気まずいとか気にしてられないくらい、彼は辛いんだろうな。
彼の荷物とコンビニの袋を持って、阿部のことを支えながらエントランスへ向かう。
「あ、Aちゃん！ありがとね」
『いえ。いつもお世話になっているので。
あ、玄関まで着いて行きます』
マネさんには伝えてあるからきっと大丈夫。
助かるわという阿部のお母さんと辛そうな阿部。
エレベーターの中は沈黙だけど、ずっと彼のことを支えて、無事家まで送り届けた時の安堵感と言ったらそれはもうすごいもので。
その場に座り込みそうになったくらいだ。
そうもいかないので、慌ててマネージャーが待つ車へ向かい、乗り込むと「お疲れ様」と缶コーヒーを渡された。
私、マネージャーじゃなくて、アイドルなんだけどな。
なんてもらった缶コーヒーを見つめた。
阿部の体調が回復しますように。
◇
倍にしてお返しします
◇
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