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すっかり日が落ち領地名にそぐう宵闇が迫る山の中、漆黒の装束に着替えたAは先を走る男をただひたすら追っていた。
「逃げ足早いねぇ〜!」
「くそっ……!!」
余裕の笑みを浮かべながら走るA。その手には血濡れた苦無が握られていた。
一方追われている男は、血濡れた右腕を押さえながらこうなった経緯を思い返していた。
とある城に仕える忍者である男は、領地拡大のため宵闇朔夜の暗殺を命令され入念に標的の動向と城内を探った。そして城仕えの忍者が軒並み辞めたことを知り、手にかけるなら今が絶好の機会だと思い明日任務を決行するつもりでいた。
「よし、逃げ道の確認終了。これで明日はスムーズに任務を遂行できるな」
そんな男は、明日の任務のことを考えると寝付けなかったためヨイヤミ領地にて最終確認をしていた。
別に楽しみで寝れなかったのではない。緊張のせいだ。
その理由は、男が普段集団で戦う部隊に所属しているからである。男にとって単独任務は久々だし、暗殺は専門外なのだ。
だが何度もシミュレーションしたり確認をすればその緊張も幾らかほぐれた。お陰でどっと睡魔が襲ってきた。
「くぁあ……そろそろ明日に備えて寝た方が良いな」
「私もそうした方が良いと思うな。ところでどんな任務なんだ?」
男が何気なく発した言葉は誰かに拾われた。
全く、明日決行だというのに今更何を言っている。任務内容を忘れたなんて隊長に知られたらタダですまんぞ?
男はこの間抜けな
「宵闇朔夜の暗殺だ。明日決行なのに忘れたのか?」
「ああそうだったな!いやぁ明日か」
「そうだ。だからこうして今最終確認を……」
はたと言葉が止まった。男があることに気がついたのだ。
(待て、今回の任務は部隊ではなく俺個人に下されたものだ。つまり俺以外の隊員がここにいるはずはない)
「そうか!最終確認をしていたところだったんだな!」
(じゃあこの、俺の右隣から話しかけてくるやつは誰だ?)
「ん?どうした?」
「……貴様、何者だ」
「やだなぁ知っているだろう?」
男は右隣にいる人物の気配から同業者、即ち忍者だろうと察した。
だが、
「ヨイヤミ城の忍者は軒並み辞めたはずだ」
「でも『全員』ではない。それくらい数ヶ月に及んで調べてたんだから知ってるでしょ?」
男はハッとした。そして確かに唯一残った忍者がいたことを思い出した。
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レオン(プロフ) - 零さん» コメントありがとうございます。続きを更新しました!続編にてご覧ください。 (2022年8月3日 15時) (レス) id: bc25bf8dca (このIDを非表示/違反報告)
零(プロフ) - 続きが速く見たいです (2022年7月30日 14時) (レス) @page47 id: 730adcd2c0 (このIDを非表示/違反報告)
レオン(プロフ) - 小桜さん» コメントありがとうございます!更新を喜んでいただけて嬉しいです!これからも頑張ります!!またご指摘もありがとうございます。訂正いたしました! (2022年7月5日 21時) (レス) id: fc3a292471 (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 更新嬉しいですー! 29-6の夢主さんの説明のところ「高いく」は「高く」ではないでしょうか? 一応お伝えしときます。これからも無理のない範囲で頑張って下さい! (2022年7月5日 16時) (レス) @page34 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
レオン(プロフ) - マイさん» コメント、そして応援ありがとうございます!面白い、好みと言っていただけてとても嬉しいです!!これからも頑張りますのでお楽しみいただければ幸いです! (2022年7月3日 10時) (レス) id: fc3a292471 (このIDを非表示/違反報告)
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