15-4 〈続き〉 ページ4
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「おにぎり！！いいなー俺も食いたい！！」
「勘右衛門、涎垂れてるよ……」
はっきり言おう。私の不安は的中した。
食堂の天井裏についてすぐ、勘右衛門は下で彼らが食べているおにぎりに目を輝かせダラダラと涎を垂らしまくった。
そして雷蔵はそれを見て、拭いた方がいいのか、それとも放っておくべきかと迷っている。
この状況を一言で言えばカオスである。
だから私は『今ここで何か言ってもこいつらには届かない』と、観察する事も忘れて顔を手で覆った。
そんな状態はしばらく続き、本来の目的を思い出したのは下からおばちゃんの声が聞こえた時だった。
「そういえば気になっていたんだけど、Aちゃんは伏木蔵くんのお姉さんかしら？」
成程、観察対象の名前はAというのか。
さっき自己紹介していたようだが、勘右衛門がおにぎりおにぎりとうるさかったので聞こえなかったので知れてよかった。
にしても今出てきた伏木蔵って……
「ん、はい。鶴町伏木蔵の姉です」
「まぁ！やっぱり！名字一緒だし、なんとなく目元が似てるからそうかなぁと思ったのよ！」
やっぱり鶴町伏木蔵のことか。
つまりこの人のフルネームは鶴町A。そして伏木蔵の姉。
確かにちょっと似ている気もする。
あーそうか。だからさっきろ組の教室に行った時にテンション高かったんだな。納得。
……っては？姉？
「お、おい、三郎、雷蔵、今の会話聞いたか？」
「う、うん、僕は聞いた」
「……私も」
いつの間にか涎を拭いた勘右衛門が、今度は冷や汗をダラダラと流している。
「あの人さ、鶴町伏木蔵の『姉』って言ってたよな？」
「言ってたね……」
「姉って事はさ、つまりさ……」
「あの人、女だな」
“ガタガタッ”
あの人が女だと断定したら2人は慌てた。そしてその衝撃で大きな音が出る。
(これは確実にバレただろうな)
あの人にバレるのは不味いが、正直それよりもおばちゃんにバレる方がもっと不味い。
実は下級生の頃、天井裏で遊んでいたのが見つかりこっ酷く怒られたことがある。
「料理に埃が入るでしょうが！！！」
そう怒鳴ったおばちゃんは般若を凌ぐ怖さだった。……やっば、思い出したら寒気がしてきた。
「おい、2人とも逃げるぞ！！！」
「おおおおおおう！！！」
「え、うん！！」
慌てる2人の腕を引っ掴み、私達は天井裏を後にした。
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