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ポロリ ポロリ ポロリ ポロリ
いくら泣いちゃダメだと思ったところで、一度溢れてしまった涙はもう止まることを知らない。
「なんで、なんで止まらないのぉ……」
必死に涙を止めようと両目をゴシゴシ擦る伏木蔵を見て、雑渡は未だ抱えていたAをそっと地面に下ろした。そして、伏木蔵の両手を掴んで目から離す。
「そんなに擦ると眼が赤くなるからやめなさいって」
「でもぉ……」
「そんなに大事な約束だったの?」
「はい……」
「そっか。誰と何の約束したのか知らないけど、泣くことは悪いことじゃないよ」
「それは、そうかもしれませんけどぉ……」
真っ赤な目でズビズビと鼻を鳴らしながら話す伏木蔵。その姿に雑渡はとてつもなく庇護欲がそそられた。
「じゃあ、私が伏木蔵くんの代わりにその約束相手に怒られよう。伏木蔵くんが約束を破ってしまったのは私のせいだからってね」
その結果がこの発言である。
「相手は誰だい?先輩?それとも先生かい?」
忍術学園で生活する伏木蔵が約束をする相手なんて学園の関係者くらいだろう。しかし『泣いちゃダメ』なんて内容の約束を友達とするとは思えない。だったら先輩か先生と、実習とか恐怖心が出そうな場面で約束したんじゃないだろうか。
なんていう推理も展開させた。
しかし、残念なことに、雑渡は名探偵ではなかった。
「お、お姉ちゃんです」
「え?」
「さっき……お姉ちゃんが気絶する前に言ったんです」
推理力は無かった雑渡だが、勘だけはとてつもなく携わっていた。故に、この後なんだか嫌な予感がするなぁと内心呟いた。
「『泣かないで、笑っていて』って」
そう言って伏木蔵がにこりと笑うと、細まった目尻からつぅっと涙が流れた。
その瞬間、雑渡の背後からとてつもない殺気が立ち込めた。そして地を這うような低い声が洞窟内に響く。
「おい、なに泣かせてるんだ」
「……伏木蔵くん、やっぱり代わりに怒られるのは無しにしてもらえる?」
あんなこと言わなきゃよかったなんて、後悔先に立たずとは正にこの事ってか?
雑渡は頭を抱えた。
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焉音 - 更新待ってます (6月9日 18時) (レス) @page20 id: 8de281d2e2 (このIDを非表示/違反報告)
平泉 - 面白い小説を書いてくださり、ありがとうございます!本当にいい作品! (2023年3月25日 21時) (レス) @page20 id: 06de6e20e0 (このIDを非表示/違反報告)
黒糖さまでーす - え、ヤバい好きです????展開がくっそ気になります。何周見てもお面白いです更新待ってまーす (2023年3月16日 13時) (レス) @page20 id: b07dd8e215 (このIDを非表示/違反報告)
えぬ。 - 初コメ失礼します!めちゃくちゃ面白くて一気読みしちゃいました……!無理しない程度で更新楽しみ頑張ってください!! (2023年2月10日 19時) (レス) @page20 id: 80ee3c1f74 (このIDを非表示/違反報告)
Moon(プロフ) - こんにちは(*ˊᵕˋ*)コメント失礼します🙇♀️めっちゃこの物語良き過ぎます(๑•̀ㅂ•́)و✧続き楽しみにしています(*^^*)🎶 (2023年2月9日 19時) (レス) @page20 id: b2ea47ad96 (このIDを非表示/違反報告)
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