嫉妬 ページ15
「ただいま〜」
そう玄関から声が聞こえて
薄ら目を開ける。
「蓮〜？いる〜？」
扉が開いて目の前には
待ち焦がれたAちゃんがいた。
「ごめん、寝てた？」
起こしちゃったね、と
気まずそうに笑うAちゃんは
寝ている俺の前に座ると
優しく俺の頭を撫でた。
「、、、どこ行ってたの？」
そう言うとAちゃんの
手はピタッと止まって
気まずそうに俯いた。
「、、、ふっかさんとこ？」
「え、？」
「昨日見ちゃったんだ。
Aちゃんがふっかさんと歩いてるとこ」
そう言って起き上がると
Aちゃんは
小さくごめんね、と呟いた。
「なんでAちゃんが謝るの？」
「蓮からたくさんLINEとか着信
来てたのに、返せなかったから」
「ううん。
あのね、Aちゃん。」
「ん？どうしたの？」
「、、、ちょっとごめん」
我慢出来なくて
目の前にいるAちゃんの腕を引き寄せて
自分の腕の中に引き込んだ。
「蓮？」
「、、、ふっかさんの匂いさせんなよ。」
そう呟けばAちゃんは
黙り込んだ。
「ふっかさんとより戻すの？」
「、、、ううん。戻さないよ」
そう言うとAちゃんは
俺の頭をまた撫でる。
「俺の事、捨てない？」
「なんで、蓮のこと捨てる前提なの」
「俺ね、初めてなんだよ。
こうして誰かが帰ってくるの
ずっと待ってたの」
「え？」
「すげぇ寂しかった。
いつもAちゃんが蓮って
俺の事待っててくれて受け入れてくれてたのに。
一人でいるこの部屋は暗すぎて。
どうにかなりそうだった」
そう言うとAちゃんは
何度もごめんね、と呟いた。
「俺の事、捨てないで」
そう言って縋りつけば
Aちゃんは
捨てないよ、と更に
強く俺を抱きしめてくれる。
「俺Aちゃんしかいないんだ」
「、、、うん」
「一緒にいてよ、俺と」
そう言ってAちゃんの顔を見れば
いつもと変わらず優しい顔で笑っていて
「今は蓮と居たいよ、私も」
【今は】って言葉が少し引っかかるけど
俺と一緒に居たいって思ってくれてるのは
少し期待してもいいってことなのかな？
「、、うん。」
おいで、と言われるまま
Aちゃんの胸の中に沈まれば
ふっかさんの匂いとAちゃんの
匂いが混じっていて。
ふっかさんとAちゃんが
付き合っていて
【そういうこと】もしてたんだろうって
いう事実が俺の中に闇を落としていた。
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作者名：あやぴ
| 作成日時：2021年9月7日 3時
