盲目の貴女へ/祈本里香 ページ9
分かってたよ、貴女に私が見えてないことくらい。
私にはどうしても忘れられないクラスメイトが居る。もう高校生にもなって何を言っているのだと言う話したが私はその子に心を奪われてしまい未だに彼氏の一つもできないのである。
その問いを友人にぶつけると恋してなくても行為はできるのでは?と真顔で返されたが私はそれを拒んでしまった。理由なんて簡単だ。
あの娘が安心するから、それだけである。
「乙骨はさぁ。もうちょっと男っ気ある方がいいよ。」
真顔で友人には言われるけれどつくるつもりは毛頭ない。だって恋は盲目だ、一度惚れれば叶うまで永遠に離れられない。
まるで呪いのように。
私には兄がいる。名を憂太という。憂鬱という文字の憂いを何持っているということで彼女とはやな感じ、と笑いあった。けれど憂は優でもある。私の兄は本当に優しくて鈍感でそれでも彼女からの愛に答えていた。
彼女が、死ぬまでは。
私は対向車線を友人と歩きながら談笑し、ああ兄は今日も彼女といると嫉妬していた。あの幼さで隠した邪気ある美しい少女と共にいられる兄が羨ましくて少しだけ呪ってみたりもした。転びますようにとか風邪を引きますようにとかそんなこと。
そんなことを考えていたら、呆気なく。私の初恋の人はそこらへんによくいる車に轢かれて美しい顔もグチャグチャになって愛を吐いていた口も塞がれて帰らぬ人となった。
あの日から兄の様子がおかしくなった。何かに怯えるようになり、私もその何かを感じていた。けれど私は見てみぬふりをした。彼女を独占していた兄が許せなかったからだ。死んでも彼女の中の思い出の中で兄が占める割合が多かったから。
兄を呪っていた。兄を羨んでいた。だから彼女に恨まれた。
あの時のことはよく覚えている。確か彼女の命日だった。懐かしむように彼女から貰った婚約指輪を見ている兄が憎らしくて憎らしくて思わず死ねば良いのにと思ってしまった、その時だった。
足が宙を浮いて頭が何かにぶつかった。視界が点滅して口の中から鉄の味がした。ゆっくりと目を開けると怯えている兄が後ろの何かを必死でなだめながら叫んでいた。
「里香ちゃん」と。
その日私は恋した人から殴られた。わけのわからない傷と荒れ具合に母はかなり動揺していたが私には愛おしいものと思えて仕方なかった。そして死んだあとも彼女と関わりのある兄が死ぬほど羨ましくて妬ましくて寂しかった。
結局あの子の中で私は好きな人の妹だった。
盲目の貴女へ-弐−/祈本里香→←テイク・シャープ・ラバー-弐-/釘崎野薔薇
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葡萄ゆづゆ(プロフ) - ささまめ。さん» 時間的に私かな?と思ったので返信させていただきます。滅茶苦茶に嬉しいです、ありがとうございます。最上級のお褒めの言葉、創作者冥利に尽きます。本当にありがとうございます…… (2019年11月14日 20時) (レス) id: 167dee6e94 (このIDを非表示/違反報告)
ささまめ。(プロフ) - 最新話、題名とお話の内容、どちらとも何故か泣きかけました。いつも素晴らしい作品をありがとうございます。 (2019年11月12日 17時) (レス) id: 953be4ace3 (このIDを非表示/違反報告)
ロゼ(プロフ) - はるさめさん» そうなんですね すみませんご解答ありがとうございます 名前がどうだからこの作品を見ないっていう訳ではないのでこれからも読まさせてください 更新頑張って下さい 応援してます (2019年7月14日 23時) (レス) id: baa98cba69 (このIDを非表示/違反報告)
はるさめ(プロフ) - ロゼさん» 他の作者さんについては本人の意向があるだろうし何も言えませんが、私自身短編を書く時はなんとなく名前を出さないように書いちゃいますね。ですが名前を出す際は名前変換を使おうと思っています!解答になっていなくてすみません。引き続きご愛読頂けると幸いです。 (2019年7月14日 19時) (レス) id: 965a17df9d (このIDを非表示/違反報告)
ロゼ(プロフ) - いつも良い話をありがとうございます すみません 質問なのですがこの作品は名前変換がない作品なのですか? (2019年7月14日 19時) (レス) id: baa98cba69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:呪術廻戦1周年をお祝いする人 x他2人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2019年5月12日 22時