幸せの代名詞/乙骨憂太 ページ4
「良いのかよお前」
「え?ごめん何が?」
真希からの謎の問いに私は精一杯の謎顔を作った。首を傾げるとはあああ、なんて重いため息を彼女は零す。
「憂太の事だよ、好きなんだろ?」
「……あー」
そっちね、と私は意味ありげに憂太の方へ目をやる。
特級過呪怨霊、祈本里香が解呪してから1ヶ月。憂太自身が呪いをかけたというのもあって特に彼の実力が半減するでもなく、特級の名をを続けて冠しながら今日も視界の端で訓練をしている。
なんで分かっちゃうかなあ。そう笑うと真希は、
「この前寝ぼけて私に相談してきた」
と。なんて無防備なのだろう。確かによくよく考えれば超鈍感モンスターの真希が私の淡くて薄味の恋心に気づくはずもないから自白が最も有力な線だけれど。
「聞きたくないけど教えて、なんて相談してたの私……」
「あ〜〜憂太の彼女の枠空かないかな〜〜〜」
「ストップお願いやめて」
自分の頭の悪さに霹靂としながら今度は私が重いため息を零した。クソバカ……。
来月に憂太は海外に行くことが決まっている。それで焦ってしまったのだろうか。記憶がないので真相は闇の中だが彼女のいる人間相手に酷いことを口走った。
「で、ほんとに良いのか?」
「うん、まあ、別に」
「締まらねえ返事だな」
自販機で買ったおーいお茶をごくごくと飲み干して、真希は空を仰ぐ。
別に。それしか言うことが無かった。全く情けない。
「憂太には
「もう見れなくなるけどな」
1年くらいで帰ってくるでしょ。そう笑おうとしてやめた。いくら憂太が強くても、術師なのだからいつああやって笑っている姿を見られなくなるかは分からない。
難儀な仕事だ。呪霊相手には本当に強い人でも、え、と言うそのコンマの間に死んでしまったりする。等級が高い人ほど信じ難い。受け入れられない。私の父もそうだった。交通事故。
「私が生きる上で憂太の存在があればいい」
このまま行けばほっといても先に死ぬのは私だし、多分。そう言うと真希も何かを言い返そうとして口を噤んだ。
時限式の爆弾はもう首まで迫っている。頭の先まで届くのにあともう3年程。頭に近づくほど私の呪力は強くなる。皮肉だ。
あわよくば憂太の中にも私の存在があれば。そしてあの彼女と同じように呪われれば。そんな馬鹿な事。
こう思うのも、全部呪いのせいだ。なんて。
作者:葡萄ゆづゆ
私の幸せは其処に貴方が居る事。
45人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
葡萄ゆづゆ(プロフ) - ささまめ。さん» 時間的に私かな?と思ったので返信させていただきます。滅茶苦茶に嬉しいです、ありがとうございます。最上級のお褒めの言葉、創作者冥利に尽きます。本当にありがとうございます…… (2019年11月14日 20時) (レス) id: 167dee6e94 (このIDを非表示/違反報告)
ささまめ。(プロフ) - 最新話、題名とお話の内容、どちらとも何故か泣きかけました。いつも素晴らしい作品をありがとうございます。 (2019年11月12日 17時) (レス) id: 953be4ace3 (このIDを非表示/違反報告)
ロゼ(プロフ) - はるさめさん» そうなんですね すみませんご解答ありがとうございます 名前がどうだからこの作品を見ないっていう訳ではないのでこれからも読まさせてください 更新頑張って下さい 応援してます (2019年7月14日 23時) (レス) id: baa98cba69 (このIDを非表示/違反報告)
はるさめ(プロフ) - ロゼさん» 他の作者さんについては本人の意向があるだろうし何も言えませんが、私自身短編を書く時はなんとなく名前を出さないように書いちゃいますね。ですが名前を出す際は名前変換を使おうと思っています!解答になっていなくてすみません。引き続きご愛読頂けると幸いです。 (2019年7月14日 19時) (レス) id: 965a17df9d (このIDを非表示/違反報告)
ロゼ(プロフ) - いつも良い話をありがとうございます すみません 質問なのですがこの作品は名前変換がない作品なのですか? (2019年7月14日 19時) (レス) id: baa98cba69 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:呪術廻戦1周年をお祝いする人 x他2人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2019年5月12日 22時