賞味期限はまだ来ない/禪院真希 ページ23
彼女は死んだ。死んだと言うにはあまりに呆気ない最期だったので、どうにも彼女が死んだのだという事実を受け入れられないままでいる。
あまりにも乾いた死だった。ちょうど今日の青空のようにシンプルな。
てっきり呪術師として死ぬのだろうと思っていたのだが、彼女は毎回私の想定を裏切ってくる。
彼女の、Aの死は、交通事故だった。道路に飛び出した少女を庇って車に轢かれて、即死だったそうだ。
Aは一般人として死んだ。善良で、お人好しが過ぎる一介の女子高生として。
これで良かったのだと思う。
私らがいつかそうなるように、彼女が呪いと対峙して、遺体も残らないまま死んでしまうよりも、ずっと。
Aは善人だった。呪術師らしくない呪術師だった。死ぬには勿体ない人だった。
青空が好きだと言っていた。青空みたいにからからと笑う、私が好きだとよく言っていた。
私からすれば、青空によく似ていたのは彼女の方だった。目が痛くなるほど眩しくて、爽やかで、からりと晴れた、人々に愛されるやつだった。
彼女は時々妙な事をした。そう、例えば「友情の対価」を払ったりだとか。
缶ジュース1本分。賞味期限はAが死ぬまで。
つまり、今現在の私と彼女の間に友情は存在しない。
だから私からも友情の対価をやろう。お前は私に対価を払ったけれど、私はお前に対価を払っていなかったから。
ここから先、どれくらい生きられるか分からないけれど、私が生きている間、Aと私の間には、確かな友情がある。
良かったな、まだ友達でいられるぞ。
何だかんだと寂しがりなアイツの事だ。きっと天国で喜んでいるに違いない。あの、青空の笑みを浮かべながら。
天国のお前に、乾杯。
喉の中を流れ落ちた清涼飲料水は、胸焼けがするほど甘ったるくて、生涯忘れられそうにない味だった。
作者:色鳥
友情の期限っていつなんだろうね。
こちらから読み返してみるのも一興。
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葡萄ゆづゆ(プロフ) - ささまめ。さん» 時間的に私かな?と思ったので返信させていただきます。滅茶苦茶に嬉しいです、ありがとうございます。最上級のお褒めの言葉、創作者冥利に尽きます。本当にありがとうございます…… (2019年11月14日 20時) (レス) id: 167dee6e94 (このIDを非表示/違反報告)
ささまめ。(プロフ) - 最新話、題名とお話の内容、どちらとも何故か泣きかけました。いつも素晴らしい作品をありがとうございます。 (2019年11月12日 17時) (レス) id: 953be4ace3 (このIDを非表示/違反報告)
ロゼ(プロフ) - はるさめさん» そうなんですね すみませんご解答ありがとうございます 名前がどうだからこの作品を見ないっていう訳ではないのでこれからも読まさせてください 更新頑張って下さい 応援してます (2019年7月14日 23時) (レス) id: baa98cba69 (このIDを非表示/違反報告)
はるさめ(プロフ) - ロゼさん» 他の作者さんについては本人の意向があるだろうし何も言えませんが、私自身短編を書く時はなんとなく名前を出さないように書いちゃいますね。ですが名前を出す際は名前変換を使おうと思っています!解答になっていなくてすみません。引き続きご愛読頂けると幸いです。 (2019年7月14日 19時) (レス) id: 965a17df9d (このIDを非表示/違反報告)
ロゼ(プロフ) - いつも良い話をありがとうございます すみません 質問なのですがこの作品は名前変換がない作品なのですか? (2019年7月14日 19時) (レス) id: baa98cba69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:呪術廻戦1周年をお祝いする人 x他2人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2019年5月12日 22時