曖昧な妄想を−弐−/釘崎野薔薇 ページ17
「クソ暑いわねほんと。」
木造もクーラーなしもやになるわ、なんて言って野薔薇は手持ちの扇風機を取り出した。韓民国で流行っているらしい。巷では韓国アイドルが大人気だそうでうちの学校にも何人かにわかがいる。にわかが。
こいつは色々な鬱憤を腐れ縁である私にぶちまけることで解消し、私もこいつの鬱憤を聞くことが楽しみになっていた。要は愚痴大会である。こいつはあの子がいなくなった穴を埋めるように私に都会の素晴らしさだとかそのへんをレクチャーし「一緒に東京行こうぜ!」という約束まで強引に建てられた。化粧も服も雑貨もこいつからのおすすめである。
「まあ都会馬鹿のおかけで東京に行っても田舎者扱いされずに済みそうね。」
「感謝しなさいよ私に。色々調べたんだから。」
暑っ、と呟いて野薔薇は外を見る。その横顔を眺めながら私はちらりとクラスを見回した。刺すような視線が私達に向けられている。それを自覚している上で東京の話を標準語で話すあたり私達もなかなか性格が悪い。
こんな町抜け出したかった。もっとまともな環境のあるまともな学校で勉学に励みたいという私と都会に行きたいという野薔薇。田舎町の猿どもとしては都会に憧れるイキリ集団扱いで犬猿されているが野薔薇がいるから他はどうでもいいのだ。
「ねえ野薔薇。私が高校受かったら放課後渋谷行くよ。」
「はあ?原宿に決まってんでしょうが。」
「は?私109行きたいんだけど。あと交差点。」
「は?時代は原宿よ!」
「知るかんなもん。」
シャープペンシルを動かしながら夢を描く。こいつと放課後ミニスカでプリクラ撮ってタピオカ飲んでスタバに行って買い物して自撮りして馬鹿みたいなこと言い合って。田舎でしてきたことを都会でやること、変わらないようでとても意味がある私達の夢。
「あと野薔薇、これあんたに。」
渡し忘れていたという風にわざとらしく私はポーチを取り出して、包装された箱を彼女に渡した。首を傾げている彼女にもう一つ箱を取り出して、私は笑う。
「合格祈願に買ったトマト色のティントリップ。これつけて渋谷でも原宿でも行くよ。」
ありがと、とどこか優しい手付きで受け取った野薔薇は慈しむように箱を撫でた。そして彼女はポケットにそれをしまう。
「つけないの?」
「んなわけないでしょ。大体」
あんたが受かってからつけるんだから、と笑った幼なじみがとても眩しかった。
作者 アヤ
友人としての愛情と、夢を追いかける青春です。
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葡萄ゆづゆ(プロフ) - ささまめ。さん» 時間的に私かな?と思ったので返信させていただきます。滅茶苦茶に嬉しいです、ありがとうございます。最上級のお褒めの言葉、創作者冥利に尽きます。本当にありがとうございます…… (2019年11月14日 20時) (レス) id: 167dee6e94 (このIDを非表示/違反報告)
ささまめ。(プロフ) - 最新話、題名とお話の内容、どちらとも何故か泣きかけました。いつも素晴らしい作品をありがとうございます。 (2019年11月12日 17時) (レス) id: 953be4ace3 (このIDを非表示/違反報告)
ロゼ(プロフ) - はるさめさん» そうなんですね すみませんご解答ありがとうございます 名前がどうだからこの作品を見ないっていう訳ではないのでこれからも読まさせてください 更新頑張って下さい 応援してます (2019年7月14日 23時) (レス) id: baa98cba69 (このIDを非表示/違反報告)
はるさめ(プロフ) - ロゼさん» 他の作者さんについては本人の意向があるだろうし何も言えませんが、私自身短編を書く時はなんとなく名前を出さないように書いちゃいますね。ですが名前を出す際は名前変換を使おうと思っています!解答になっていなくてすみません。引き続きご愛読頂けると幸いです。 (2019年7月14日 19時) (レス) id: 965a17df9d (このIDを非表示/違反報告)
ロゼ(プロフ) - いつも良い話をありがとうございます すみません 質問なのですがこの作品は名前変換がない作品なのですか? (2019年7月14日 19時) (レス) id: baa98cba69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:呪術廻戦1周年をお祝いする人 x他2人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2019年5月12日 22時